抄録
我々はヒトとニホンザルにおいて,上殿動脈(Gs)が仙骨神経叢を貫く位置の多様性について調査してきた.ヒトにおいてはGsの貫通位置と分岐神経(Nf; 大腿神経への枝,閉鎖神経への枝,腰仙骨神経幹への枝の3枝に分岐する)の位置関係に基づく分類法を考案し,一定の成果を得た.即ち,GsはNfを基準に3つの経路を辿ること,また基準となるNfの起始分節が変異に富むことから,Gsの貫通位置が多様化すると整理できた(姉帯他,2013).そこで今回ニホンザル7体14側を対象に,Gsの貫通位置について上記分類法による所見の整理を試みた.
ニホンザルのGsは,1)Nf起始分節から2分節尾側の神経根を貫く例; 8側,2)2分節尾側の神経根下縁を通る例; 2側,3)3分節尾側の神経根を貫く例; 4側,の3通りが観察された.
1)Gsの貫通位置は,L7/L7間(2側),S1/S1間(6側)の2通りが観察された.ⅰ)L7/L7間: Nf起始分節はL5であったが,L5から腰仙骨神経幹への参加が多い例(1側),中等量の例(1側)があった.後者は前者に比べ分節構成が低い.ⅱ)S1/S1間: Nf起始分節はL5+L6(2側),L6(4側)であり,これらの分節構成はさらに低い.
2)Gsの貫通位置はL7/S1間(2側)であった.Nfの起始分節はL5で,L5の腰仙骨神経幹への参加は少ない(2側).
3)Gsの貫通位置はS1/S1間であった(4側).Nfの起始分節はL5で,L5の腰仙骨神経幹への参加は少ない(4側).
以上より,ニホンザルのGsはNfを基準に3つの経路を辿る.また1)においてはNf起始分節が変異に富み,さらにNf起始分節の頭尾側へのズレに伴いGsの貫通位置も頭尾側へズレる.よって,Gsの貫通位置の多様性についてヒトと同様に理解・整理できる可能性がある.本研究は京都大学霊長類研究所共同利用研究によって実施された.