日本薬理学雑誌
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総説
シナプス入力のリアルタイムイメージング
小林 千晃高橋 直矢池谷 裕二
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2012 年 140 巻 1 号 p. 19-23

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抄録
脳は多様な情報を柔軟に処理することで多彩な機能を発揮している.これまでに,個体レベルから単一細胞レベルに至る多くの研究がなされ,脳の機能の多様性がどう生じているのかという疑問が徐々に解消されてきた.しかし,こうした研究成果が蓄積されるとともに,従来のアプローチだけでは脳の多様性を説明することは不十分であることもわかってきた.神経回路を構成するニューロンは,互いにシナプスを介して結合することで情報を伝達している.近年,樹状突起に存在する多数のシナプスを通じて,単一のニューロンでも高度な情報処理を行うことが可能であることが示唆されている.たとえば,ニューロンは,シナプス活動の時空間パターンを非線形に積算することで,情報のフィルタリングや論理演算を行なっている.また,シナプス可塑性を通じて積極的に神経回路網を書き換えることで,より効率的に情報の多様性と安定性を実現している.したがって,シナプス活動を詳細に観察することは,ニューロンの作動原理を解明するうえで必須である.今回,我々は,機能的スパインカルシウム画像法の開発により,ニューロンの情報処理をシナプスレベルで解明することができるようになった.本稿では,同実験手技の開発に至る経緯とともに,今後の展望についてもふれる.
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© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
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