日本薬理学雑誌
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総説
『免疫系と神経系をつなぐ分子』 免疫系と神経系で働く新しい分子機構
柳川 芳毅久保 靖憲松本 真知子富樫 廣子
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2013 年 141 巻 1 号 p. 27-31

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抄録
免疫系と神経系との間には相互調節機構が存在する.神経系による免疫系制御の1つとして,アドレナリン受容体を介した樹状細胞(抗原提示細胞)の機能調節があげられる.ノルアドレナリンやアドレナリンは,α2受容体を介して樹状細胞の抗原取り込みを促進し,β受容体を介してサイトカイン産生バランスを調節する.アドレナリンβ受容体を介したシグナルは,炎症性サイトカインの産生を抑制するが,アレルギー増悪因子であるインターロイキン-33の産生を上昇させる.このサイトカイン産生バランスの変化は,ストレス時における免疫力低下とアレルギー性疾患の増悪に関係していると推察される.一方,免疫系による神経系制御の1つとして,Toll様受容体(TLR)7を介した文脈的恐怖記憶の強化があげられる.この現象は,ウイルス感染時の状況を,好ましくない状況として記憶し,その状況を回避するための機構を反映しているのかもしれない.免疫系と神経系は情報伝達物質や受容体を共有し,それらの分子を介して互いに連携し,免疫反応と危険回避のための行動を併せた広い意味での生体防御において重要な役割を果たしていると考えられる.
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© 2013 公益社団法人 日本薬理学会
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