日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 がん化学療法に伴う神経障害性疼痛―最近の研究動向
『日本から発信!抗がん薬による痛みへの対応法』 オキサリプラチンによる末梢神経障害の発現機序と治療薬の基礎的エビデンス
江頭 伸昭川尻 雄大大石 了三
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 141 巻 2 号 p. 66-70

詳細
抄録

白金系抗がん薬であるオキサリプラチンは,大腸がん治療のキードラッグであるが,急性および慢性の末梢神経障害を高頻度で発現し,身体的苦痛から患者のquality of life(QOL)を著しく低下させるだけでなく,がん治療の変更や中止を余儀なくさせることから,臨床上大きな問題となっている.オキサリプラチンによる末梢神経障害に対しては,エビデンスレベルの高い確立された予防・治療法はなく,症状が強くなった場合には休薬,減量,他薬への切り替えが行われているのが現状である.著者らは,オキサリプラチンによる末梢神経障害動物モデルを作製し,急性末梢神経障害である冷感過敏の発現には,オキサレート基によるNa+チャネル/Ca2+チャネル/nuclear factor of activated T-cell(NFAT)経路を介したtransient receptor potential melastatin 8(TRPM8)の発現増加が,慢性末梢神経障害である機械的アロディニアの発現には,白金を含有する部分によるNMDA受容体NR2Bサブユニットを介したnitric oxide(NO)の合成酵素(NOS)やCa2+/calmodulin dependent protein kinase II(CaMKII)の活性化がそれぞれ関与していることを明らかにした.さらに,その発現機序に基づいた予防・治療候補薬をいくつか見出した.今後はさらに詳細な発現機序の解明を行い,その発現機序に基づいた取り組みによって確かなエビデンスを構築していくことが重要である.

著者関連情報
© 2013 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top