日本薬理学雑誌
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総説
動物実験研究者必見 動物実験の倫理指針と苦痛度評価
鍵山 直子水島 友子
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2013 年 141 巻 3 号 p. 141-149

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抄録

平成17年(2005年)の動物愛護管理法改正により動物実験の国際原則である3R(Replacement,Reduction,Refinement)が明文化され,翌年の施行にあわせて環境省は,同法に基づく実験動物の飼養保管基準を告示,文部科学省,厚生労働省,農林水産省は,3R原則を踏まえた動物実験基本指針を告示または通知した.このような動物実験に関する法的枠組は,平成24年(2012年)の法改正でも継続された.科学研究の進歩を支えることの重要性に鑑み,動物実験は研究機関による自主管理によってその適正化が図られている.しかし,実験動物をみだりに殺し,傷つけ,苦しめれば,動物愛護管理法によって処罰されるし,動物実験基本指針を遵守しなければ,氏名の公表や研究費の返還命令によって研究者生命を失うことにもなりかねない.研究機関等は法的枠組を踏まえ,日本学術会議(科学者)が発出した動物実験ガイドライン(動物実験の倫理指針)を参考にしつつ,それぞれ自主・自律的に動物実験を規制している(動物実験の自主管理).法的枠組と自主管理を組み合わせた枠組規制は,自由闊達で創意工夫に富んだ生命科学研究を決して妨げるものではない.自主管理の信頼性・網羅性・透明性は,研究者による動物実験計画の立案,機関の動物実験委員会による審査,機関長による承認と自己点検評価,外部検証および情報開示によって担保される.動物実験計画の審査は,動物の苦痛と動物実験がもたらす意義の相対評価(harm-benefit analysis)によってなされる.なかでも,研究者が動物の苦痛を正しく理解し,可能な限り軽減しているかどうかが重要と考え,筆者の所属する研究所の動物実験委員会は,実験処置コード表を作成し動物実験審査要領に添付した.本論文の後半で紹介したい.

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