日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
夜尿症用剤 デスモプレシン酢酸塩水和物(ミニリンメルト®OD錠120 μg,240 μg)の薬理作用および臨床効果
林 美貴子
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2013 年 141 巻 3 号 p. 169-174

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抄録

デスモプレシン酢酸塩水和物の口腔内崩壊錠(ミニリンメルト®OD錠120 μg,240 μg)は,本邦初の経口夜尿症用剤として,2012年3月に承認を取得した.本剤は,アルギニンバソプレシン(AVP)の誘導体で,AVPの1位のアミノ酸を脱アミノ化し,さらに8位のL-アルギニンをD-アルギニンに置換した合成ペプチドである.また,腎集合管細胞に分布するV2受容体を活性化して水の再吸収を促進する薬理学的作用(抗利尿作用)をもつ選択的V2受容体アゴニストである.デスモプレシンのラットにおけるバソプレシンV1,V2受容体およびオキシトシン受容体に対する結合親和性(Ki)はそれぞれ1748,1.04,81 nmol/L であり,バソプレシンV2受容体に選択的な結合親和性を示した.デスモプレシンは,バソプレシンV1受容体に比べV2受容体に対して高い選択性を有し,昇圧作用をほとんど有さず,用量に依存して抗利尿作用が長時間持続する特徴を有している.夜尿症患者を対象とした国内第III相試験では,本剤投与3~4週の14日間あたりの,ベースラインからの夜尿日数減少量は,本剤が3.3日,プラセボが1.5日で,本剤はプラセボに比べ有意に夜尿日数を減少させることが確認された.また,安全性においても特に問題となる有害事象は認められなかった.これらの結果より,夜尿症患者に対する本剤の安全性,忍容性が確認された.デスモプレシン製剤は,海外で40年にわたる臨床使用経験がある.経鼻製剤では,アレルギー性鼻炎等による,鼻腔粘膜からの吸収障害による薬効への影響等が認められていた.経口製剤の開発により,そのような課題が克服された.夜尿症治療に重要とされる水分摂取管理において,水なしで服用できる本OD錠は安定した臨床効果が期待できる.投与の簡便性も加わり,夜尿症で悩む患者のQOLの向上に貢献しうる薬剤であると考えられる.

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