日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
嚢胞性線維症の肺機能改善薬ドルナーゼ アルファ(プルモザイム®)の薬理学的特徴および臨床試験成績
小久保 博雅細谷 俊二市川 雅幸
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2013 年 141 巻 4 号 p. 213-219

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抄録

プルモザイム®吸入液2.5 mg(有効成分:ドルナーゼ アルファ)は,ヒトデオキシリボヌクレアーゼI(DNase I)遺伝子を用いて作製した遺伝子組換えヒトDNA分解酵素製剤で,「嚢胞性線維症における肺機能の改善」の効能・効果として2012年3月に承認された.嚢胞性線維症患者の痰を用いた試験において痰の流動性増加,コーンプレート粘度の低下がみられ,嚢胞性線維症患者に投与後気道分泌物中でDNase濃度と酵素活性が6時間にわたって維持された.気道内分泌物中に含まれている死滅好中球由来のDNA加水分解により,分泌物の粘稠性を低下させ気道からの除去を容易にすることが,肺機能の改善の主たる作用機序と考えられている.努力肺活量(FVC)が予測値の40%以上である嚢胞性線維症患者を対象に実施された臨床試験において,ネブライザーによる本薬吸入(2.5~10 mg 1日2回)は呼吸1秒量(FEV1)の増加効果を示しFVC,呼吸困難,嚢胞性線維症関連症状等,QOLの改善が認められた.また,第III相試験として気道感染の発症率低下とFEV1の持続的改善効果が示され,抗生物質非経口投与の累積日数および累積入院日数が短縮した.安全性については第III相試験において,すべての被験者で,本剤投与の忍容性に問題はなかった.主な副作用は軽度の発声障害と咽頭炎であった.以上のことから,ドルナーゼ アルファはこれまで十分な治療が施せなかった本邦の嚢胞性線維症患者の肺機能改善に寄与することが期待される.

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