日本薬理学雑誌
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特集 新規統合失調症治療薬創製のためのターゲットバリデーション戦略
『精神疾患患者サンプルに対するリプログラミング技術の応用』 疾患関連SNPを持つ患者由来誘導性神経細胞の解析
吉水 孝緒Li-Huei Tsai
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2013 年 142 巻 6 号 p. 266-270

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抄録

統合失調症や双極性障害をはじめとする精神疾患に対する既存の治療薬は,その効果や副作用の点で大きな課題を残している.疾患発症の分子メカニズムが未だ明らかになったとは言い難い本疾患領域においては,難治性や慢性の症状に対する新たな薬物治療の選択肢も今後しばらく拡がりそうにない.幾つかの精神疾患においては環境要因に加えて遺伝的な発症要因が認められているにもかかわらず,従来の連鎖解析という単一遺伝子疾患を対象にする解析手法では明確な原因分子を同定するには至っていない.こうした中,近年の目覚ましいシークエンス技術,アレイ技術の進歩を背景に,精神疾患を対象にした大規模なゲノムワイド解析が盛んに行われており,各疾患に関連するとされる一塩基多型(SNPs),コピー数多型(CNVs)といったゲノム上の多型が次々と報告されている.これら疾患に関連するリスク因子のターゲットバリデーションは治療薬創製の原点であり,とりわけゲノム解析などから得られた最新の知見をどのように創薬ターゲットの設定に繋げていくかは,新たなメカニズムに根ざした次世代治療薬を創出する上で鍵となる部分である.遺伝的多型をはじめとする疾患関連リスク因子を解析するためには様々なアプローチが考えられるが,我々は,「シャーレ上での病態の再現」を目指して,iPS細胞に代表されるリプログラミング技術を利用して研究を進めている.本稿では,精神疾患患者由来のiN細胞(直接誘導変換によって体細胞より作製した神経細胞)を用いて我々が得つつある研究成果を交えながら,精神疾患発症のリスク因子を研究するためのリプログラミング技術に関する最近の知見を紹介する.

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© 2013 公益社団法人 日本薬理学会
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