日本薬理学雑誌
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生活習慣病と循環器疾患研究の新展開
『高血圧は脳の異常であり治療標的は脳である』 脳・腎臓・心臓・血管連関による血圧動的恒常性維持システム
岸 拓弥
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2015 年 145 巻 2 号 p. 54-58

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抄録

血圧と交感神経は,短期的には圧受容器反射により閉ループのネガティブフィードバック関係にある.長期的な血圧は腎臓での圧利尿関係で決定されるが,そこにも圧受容器反射および交感神経が大きく関係している.我々は,高血圧を脳・腎・心・血管連関による血圧動的恒常性維持システム不全と考え,その制御の中心である圧受容器反射および圧受容器反射の中枢弓であり交感神経を規定する「脳」内,特に圧受容器反射中枢弓の最終情報統合部位で交感神経中枢である頭側延髄腹外側野(rostral ventrolateral medulla:RVLM)に着目して研究を行っている.一連の研究により,圧受容器反射の中枢弓が血圧の変動・安定性維持に重要であり,さらには圧利尿においても圧と同等の作用を有することを明らかにした.さらに,バイオニックブレインによる人工圧受容器制御が極めて有効であることも示した.また,脳内においては,交感神経中枢である延髄RVLM内のアンジオテンシンⅡタイプ1受容体活性化により産生される酸化ストレスが交感神経を活性化する最も強力な要因であり,高血圧における交感神経活性化の重要な機序となっていることを報告してきた.高血圧の本質的かつ未到達の治療標的は,脳である.

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