日本薬理学雑誌
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特集 新たな血管作動性物質と受容体に着目した血管研究の新展開
血管内皮由来収縮因子として発見されたウリジンアデノシンテトラフォスフェート(Up4A)の血管機能に対する役割
松本 貴之田口 久美子小林 恒雄
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2016 年 147 巻 3 号 p. 130-134

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抄録

血管内皮細胞は,血液と接する血管内腔に存在し様々な因子を放出することから,最大の内分泌器官と考えられている.2005年に新規血管内皮由来収縮因子として報告されたウリジンアデノシンテトラフォスフェート(Up4A)は,その構造体にプリンとピリミジンを含む非常にユニークな物質である.これまで,様々なモデル動物標本を用いた検討からUp4Aは収縮反応や弛緩反応を誘発するといった血管緊張性を調節することが明らかとなったが,病態下におけるUp4Aの作用に関しては全く不明であった.我々は,生活習慣病の主翼である高血圧と糖尿病に着目し,これらのモデル動物を用いて,病態下でUp4Aの収縮力が血管部位によって異なることや,血管平滑筋におけるUp4Aの収縮機序の一端を明らかとした.また,Up4Aは,血管緊張性調節のみならず,平滑筋の増殖や遊走,炎症,石灰化にも関与することが報告され病態形成への役割も明らかになりつつある.今後,この新たな血管作動性物質であるUp4Aの研究がさらに進むことにより,生理的および病態生理的な役割が明確になることが望まれる.

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