日本薬理学雑誌
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特集 新たな血管作動性物質と受容体に着目した血管研究の新展開
メタボリックシンドロームにおける血管内皮プロテアーゼ活性化型受容体2(PAR2)の機能と役割
丸山 加菜John J. McGuire篠塚 和正籠田 智美
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2016 年 147 巻 3 号 p. 135-138

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抄録

メタボリックシンドロームは,肥満を基盤として,耐糖能異常,脂質代謝異常,血圧高値などが集積することにより,動脈硬化性疾患が高頻度に生じる病態である.増加した脂肪細胞から産生・放出される種々のメディエーターが,肥満に伴う糖尿病,高血圧,動脈硬化などの発症に関与すると考えられている.一方,プロテアーゼ活性化型受容体(protease-activated receptor:PAR)は特定のセリンプロテアーゼにより特定部位が切断されリガンドとして自身を活性化するというユニークな活性化機構をもった細胞膜受容体である.中でもPAR2は,循環器系を始め,消化器系,呼吸器系,神経系など多様な組織において生理学的および病態生理学的な機能を有することから,創薬研究の標的分子として注目されている.血管内皮細胞に存在するPAR2は,内皮由来弛緩因子の産生・放出を介して血管平滑筋を弛緩させ,血管緊張性調節に寄与している.PAR2は種々のプロテアーゼや血液凝固を惹起する組織因子VIIa/Xaなどにより活性化されることから,血管壁PAR2がメタボリックシンドロームにおける病態形成に関与する可能性がある.我々は,メタボリックシンドロームモデルラットを用いた検討から,血管内皮細胞のPAR2は,メタボリックシンドロームの早期には組織・臓器への循環保持に寄与しているが,メタボリックシンドローム状態が続くとPAR2機能に破綻が生じることにより虚血性臓器障害が惹起されるのではないかと考えている.本稿では,血管内皮PAR2の血管拡張機能に焦点をあて,メタボリックシンドロームにおけるPAR2の役割について,我々の研究成果を中心に概説する.

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