2016 年 147 巻 5 号 p. 269-271
重症心不全治療として最も重要な治療法である心臓移植は,極めて深刻なドナー不足であり,新しい移植法案が可決されたものの,欧米レベルの汎用性の高い治療法としての普及は困難が予想される.一方,左室補助人工心臓(LVAD)については,日本では移植待機期間が長期であるため,感染症や脳血栓等の合併症が成績に大きく影響している.このような状況を克服するため,世界的に再生医療への期待が高まっているが,重症心不全を治癒させるまでに至らず,心臓移植やLVADに代わる新しい治療開発が急務である.このような現状のなか,重症心不全においては,細胞移植,組織移植,また再生医療的手法を用いた再生創薬の研究がすすみ,臨床応用化が進んでいる.本稿では,これまでの筋芽細胞シートのトランスレーショナルリサーチとともに,iPS細胞由来心筋細胞シートを用いた心不全治療のこころみに関して紹介し,今後の展望に関して概説する.