日本薬理学雑誌
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特集 活性イオウ含有分子による代謝シグナル制御
活性イオウ含有分子の再発見とその生物活性
井田 智章松永 哲郎藤井 重元澤 智裕赤池 孝章
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2016 年 147 巻 5 号 p. 278-284

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抄録

感染や炎症に伴い生成される活性酸素(ROS)は,酸化ストレスをもたらす組織傷害因子となる一方,細胞内レドックスシグナルのメディエーターとして機能していることがわかってきた.著者らは,生体内でROSと一酸化窒素の二次メッセンジャーである親電子物質8-ニトロ-cGMPの代謝にcystathionine β-synthase(CBS),cystathionine γ-lyase(CSE)が深く関わることを報告した.しかしながら,その代謝機構については未だ不明な点が多く残っていた.そこで,8-ニトロ-cGMPを代謝する真の活性分子種の同定に向けて,質量分析装置(LC-MS/MS)を用いた詳細なメタボローム解析を行った.その結果,CBS,CSEはシスチンを基質にシステインのチオール基が過イオウ化(ポリスルフィド化)したシステインパースルフィド(Cys-S-SH)を効率よく生成することが示された.さらに,LC-MS/MSを用いて,細胞,組織における代謝物プロファイリングを行った結果,CBS,CSEに依存したCys-S-SHなどの多様な活性イオウ分子種の生成を認めた.特に,マウス脳組織においては,100 μMを超える高いレベルのグルタチオンパースルフィドの生成が示された.活性イオウ分子の機能について,抗酸化活性とレドックスシグナル制御機能に注目して解析した結果,高い過酸化水素消去活性と8-ニトロ-cGMP代謝活性を発揮することが明らかとなった.これらの結果より,CBS,CSEにより産生される真の代謝活性物質は,Cys-S-SHなどの活性イオウ分子種であり,これらはその高い求核性や還元活性を介して,レドックスシグナルの重要なエフェクター分子として機能することが示唆された.活性イオウ分子種によるレドックスシグナル制御機構の解明は,酸化ストレスが関わる疾患の新たな治療戦略や創薬開発につながることが期待される.

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