2016 年 148 巻 2 号 p. 75-80
アストロサイトは,中枢神経系全般に存在し,シナプスや血管と密接に接触することから神経活動に必要な栄養を供給し,またその栄養を運ぶ血管を制御して血流を調節すると考えられている.最近の研究により,アストロサイトは,神経構造を維持するのみならず,積極的に神経構造及び神経活動に影響を与えることが明らかになりつつある.アストロサイトは神経細胞と異なり顕著な電気的なシグナルを発生しないが,Ca2+シグナルなどの化学的なシグナルを生じて活動すると考えられている.過去20年以上の研究の歴史の中で,アトロサイトは様々な刺激に応じて活動依存的にCa2+シグナルを生じ,これによってほかの脳細胞と情報伝達することが示されてきた.近年開発された可視化技術により,Ca2+シグナルがより詳細に解析され,その驚くべき多様性が示されてきた.さらに覚醒下行動中の動物を用いた解析により,アストロサイトのCa2+シグナルと動物の行動との関連性が明らかとなりつつある.病態時においてはアストロサイトCa2+シグナルが劇的に変調しこれが病態の一因となる可能性も示されてきている.本稿では,近年開発されたアストロサイトCa2+シグナルの可視化技術に焦点をあて,アストロサイトのCa2+シグナルが脳の健康と病態にどう関係しているのか,その最新の知見を紹介したい.