日本薬理学雑誌
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特集 SGLT2 阻害薬 : 症状からの創薬、そして治療へ
SGLT2阻害薬(ルセオグリフロジン)の血糖低下作用機序と合併症進展抑制の可能性
小島 直季寒川 能成髙橋 禎介
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2016 年 148 巻 5 号 p. 253-258

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抄録

SGLT2阻害薬は,腎臓の近位尿細管に発現するSGLT2に作用して血中の過剰な糖を尿糖として体外に排泄させるという,既存薬とは大きく異なる特徴を有した新規経口糖尿病治療薬である.SGLT2阻害薬の薬理作用機序を解明するために,耐糖能異常肥満モデル動物に対するSGLT2阻害薬ルセオグリフロジンの作用を検討した.その結果,ルセオグリフロジンは用量依存的に尿糖排泄量を増加させ,インスリン分泌に依存することなく糖負荷後の過度な血糖上昇を抑制した.日本人2型糖尿病患者を対象に24時間の血糖変動について評価した臨床試験において,ルセオグリフロジンは尿糖排泄量を増加させることにより,24時間を通して持続的に血糖値を低下させた.さらに,ルセオグリフロジンはプラセボに比較して1日を通じて血糖を良好にコントロールできることが確認され,至適な血糖範囲を占める割合を有意に増加させた.また,ルセオグリフロジンは2型糖尿病患者においても食後の血清インスリン値の上昇を有意に減少させることが明らかとなった.以上の結果から,SGLT2阻害薬は尿糖排泄増加作用によりインスリン分泌非依存的に血糖低下作用を発揮することが動物実験において明らかとなり,2型糖尿病患者に対しても同様の薬理作用を発揮することにより高血糖を是正することが明らかとなった.また,糖尿病性腎症に類似した症状を示すモデル動物において,ルセオグリフロジンは腎障害進展を抑制する効果を示したことから,糖尿病合併症の一つである糖尿病性腎症に対してSGLT2阻害薬が有効である可能性が期待された.SGLT2阻害薬の糖尿病合併症に対する治療効果については今後もさらなる検討が必要であるが,糖尿病治療の最終的な目標である合併症に対する予防効果が期待できる点においてもSGLT2阻害薬は糖尿病治療の有力なオプションとなる可能性が考えられる.

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