日本薬理学雑誌
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特集 SGLT2 阻害薬 : 症状からの創薬、そして治療へ
SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン)のPETイメージングによる作用機序の可視化と新たな可能性
高須 俊行高倉 昭治濱田 香理
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2016 年 148 巻 5 号 p. 266-271

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抄録

イプラグリフロジンL-プロリン(以下イプラグリフロジン,商品名:スーグラ®錠)は,アステラス製薬株式会社と寿製薬株式会社との共同研究により見出されたC-グリコシドタイプの選択的sodium/glucose co-transporter(Na/グルコース共輸送担体:SGLT)2阻害薬であり,2014年1月に同クラスの糖尿病治療薬として国内で初めて承認された.本薬は腎近位尿細管においてグルコースの再吸収を担う糖輸送担体であるSGLT2を阻害し,血液中の過剰なグルコースを尿糖として体外に排泄することによって高血糖を是正する.我々は,腎尿細管におけるイプラグリフロジンの作用をポジトロン放出核種である11Cで標識したmethyl-α-d-glucopyranoside(11C-MDG)を用いて直接的かつ動的にイメージング画像として捉えた.また,高脂肪食を負荷して惹起した肥満モデルラットにおけるイプラグリフロジンの体組成,特に脂肪量に対する作用をdual-energy X-ray absorptiometry(DEXA)及びcomputed tomography(CT)を用いて検討したところ,イプラグリフロジンが脂肪組織量を選択的に減少させることを見出した.さらに,非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)/非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)モデルの一つであるコリン欠乏性l-アミノ酸置換食(choline-deficient l-amino acid-defined (CDAA) diet)負荷ラットにおいて,イプラグリフロジンは肝臓の脂肪滴サイズを縮小し肝臓中TG含量を低下させるとともに,肝臓中のハイドロキシプロリン含量ならびに線維化スコアを低下させた.イプラグリフロジンは国内市販後臨床試験において,2型糖尿病患者のHbA1c及び空腹時血糖値を改善するとともに体重低下,ウエスト周囲長の低下,体脂肪量の減少及び肝酵素の低下をもたらした.これらの臨床試験成績は,上記の肥満モデルラット及びNASH/NAFLDモデルラットで得られた成績と同様,イプラグリフロジンの新たな可能性を示唆するものである.選択的SGLT2阻害薬イプラグリフロジンは2型糖尿病患者の血糖管理に貢献するだけでなく,2型糖尿病に伴う肥満やNASH/NAFLDといった合併症の改善にも寄与することが期待される.

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