日本薬理学雑誌
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特集:炎症を機転とした恒常性維持機構の破綻―免疫系細胞、がん組織、消化器系、循環器系からみた炎症性疾患の病態と制御―
代謝性疾患における脂肪酸とマクロファージによる炎症応答とのクロストーク
西山 和宏藤本 泰之中嶋 秀満竹内 正吉東 泰孝
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2017 年 149 巻 5 号 p. 200-203

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抄録

マクロファージは炎症応答を司り代謝性疾患の発症に寄与するだけでなく,全身のエネルギー代謝のバランス維持にも関与する.近年,健常時における脂肪組織内に存在するマクロファージのサブタイプに関する研究報告が相次ぎ,糖尿病やメタボリックシンドロームなどの代謝性疾患とマクロファージとの関連性に注目が集まる.今回,代謝性疾患における炎症性因子と抗炎症性因子について概説し,新しい視座を紹介する.一つ目の視座として,マクロファージのサブタイプにより炎症応答への作用が異なり,炎症応答を亢進するM1マクロファージと,逆に炎症応答を抑制するM2マクロファージとに分けられる.次の視座として,脂肪酸および関連因子が炎症応答に関与することが示され,飽和脂肪酸,n-9単価不飽和脂肪酸およびn-6多価不飽和脂肪酸は炎症応答を惹起するのに対して,エイコサペンタエン酸ならびにドコサヘキサエン酸などのn-3多価不飽和脂肪酸は炎症応答を抑制する機能を有する.したがって,マクロファージサブタイプ間と炎症や抗炎症作用を示す脂肪酸とのクロストークの研究を通じて,代謝性疾患の発症機序の理解が進み,将来の新規薬理作用点の発見に繋がることを期待したい.

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