日本薬理学雑誌
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特集:危険ドラッグの薬理学と規制
危険ドラッグの有害作用評価の現状と課題
舩田 正彦
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2017 年 150 巻 3 号 p. 135-140

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抄録

危険ドラッグの蔓延が社会問題となっている.出現する危険ドラッグは,主に中枢神経作用薬であり,これまでに流通が確認されていない「新規の化学物質」である場合が多い.代表的な薬物としては,合成カンナビノイド,カチノン系化合物,フェンシクリジン類似の催幻覚薬等である.こうした危険ドラッグに適切な規制を施すためには,薬物依存性,毒性などの有害作用に関する科学的根拠を収集することが必須であり,迅速な作用評価システムの構築が重要である.行動薬理学的手法による中枢神経に関する評価法:自発運動量の変化を指標にすることで,薬物の中枢興奮作用もしくは中枢抑制作用の有無を推測できる.また,条件付け場所嗜好性試験による報酬効果の解析から,薬物の精神依存性を予測できる.一方,多くの類縁化合物が存在する場合や催幻覚薬の評価においては,既存の規制薬物を訓練薬物として,その自覚効果の類似性を評価する薬物弁別試験は効率的な手法である.細胞を利用する評価法:薬物の毒性評価に有用である.危険ドラッグの作用点が明確なもの,例えば,合成カンナビノイドであればカンナビノイド受容体であるが,カンナビノイド受容体を強制発現させた細胞による合成カンナビノイドの毒性評価は,迅速かつ高感度での解析が可能である.危険ドラッグの作用点に着目した検出法は,薬物自体の化学構造に依存しない検出法として,化学構造が変化しても有害作用の発現が危惧される「危険性の検出」が可能となり,現場での迅速かつ効果的な流通規制が可能となる.薬物規制のために科学的根拠を収集することは,まさに薬物の作用機序を解明するための基礎研究の一部であると捉えることができる.登場する危険ドラッグは刻一刻と変化することから,新規薬物の検出システムの開発を進めるとともに,薬物乱用防止の啓発および薬物依存症対策の強化が急務である.

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