日本薬理学雑誌
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150 巻 , 3 号
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特集:危険ドラッグの薬理学と規制
  • 鈴木 勉
    2017 年 150 巻 3 号 p. 124-128
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/09
    ジャーナル フリー

    覚せい剤,麻薬及び向精神薬などの規制薬物の化学構造の一部を改変し,規制を免れているのが「危険ドラッグ」である.当初デザイナー・ドラッグや合法ドラッグと呼ばれていたが,紆余曲折を経て現在は「危険ドラッグ」と呼ばれている.そこで,「危険ドラッグ」誕生までの経緯につてまず解説する.また,「危険ドラッグ」は日本で用いられている用語であり,海外では主にnew psychotropic substances(NPS)と呼ばれているので注意が必要である.「危険ドラッグ」の明確な定義はないが,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」において,「指定薬物」は「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む)を有する蓋然性が高く,かつ,人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物として,厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの」と定義されている.指定薬物と「危険ドラッグ」は同じではなく,「危険ドラッグ」の方が指定薬物より広い意味があると思われる.「危険ドラッグ」も依存性薬物であり,乱用の流行,さらに規制との関係で数々の「危険ドラッグ」が販売されては消えてゆく.そこで,「危険ドラッグ」の種類とその年次推移についても紹介する.さらに,「危険ドラッグ」は中枢神経系に作用して興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を示す物とされている.そこで,その薬理作用についても解説する.

  • 花尻(木倉) 瑠理
    2017 年 150 巻 3 号 p. 129-134
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/09
    ジャーナル フリー

    2014年後半以降,危険ドラッグに対する規制及び取締り強化が実施され,2015年7月には販売店舗数がついにゼロになった.しかし,危険ドラッグのインターネット販売やデリバリー販売が消滅したわけではない.また,危険ドラッグから逃れられない中毒患者が存在していることも推測され,今後どのような方向に事態が推移するか予断を許さない状況下にある.実際,2015年以降,従来市場に流通していた危険ドラッグとは異なる化合物群が指定薬物に指定されている.2016年2月には,初めてガス成分(一酸化二窒素)が指定薬物に指定された.また2007年に指定薬物として規制されたサルビア・ディビノラム(活性成分サルビノリンAを含有する)に続いて,2016年3月にはミトラガイナ・スペシオサ(活性成分ミトラギニン及び/もしくは7-ヒドロキシミトラギニンを含有する)が植物として指定薬物の規制対象となった.さらにこの3年間で,メチルフェニデート,モダフィニル及びフェンメトラジンなど,日本において第一種向精神薬として規制されている薬物の構造類似化合物が相次いで指定薬物として規制された.欧米では,医療用麻薬フェンタニルの構造類似化合物等,オピオイド受容体に強い作用を及ぼす危険ドラッグの流通が問題となっており,死亡事例も報告されている.2006年に薬事法(現医薬品医療機器等法)が改正され指定薬物制度が導入された直後も,当時流通していた危険ドラッグは一時期表面上市場から消えた.しかし,2012年前後から,〝脱法ハーブ〟や,〝アロマリキッド〟等として販売された危険ドラッグ製品による健康被害が急増し,深刻な社会問題となった.乱用薬物は,形を変えつつも,流行と規制・取り締まりを繰り返している.今後も,根気強く,継続的に新規危険ドラッグの出現を監視し,科学的データを蓄積していく必要がある.

  • 舩田 正彦
    2017 年 150 巻 3 号 p. 135-140
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/09
    ジャーナル フリー

    危険ドラッグの蔓延が社会問題となっている.出現する危険ドラッグは,主に中枢神経作用薬であり,これまでに流通が確認されていない「新規の化学物質」である場合が多い.代表的な薬物としては,合成カンナビノイド,カチノン系化合物,フェンシクリジン類似の催幻覚薬等である.こうした危険ドラッグに適切な規制を施すためには,薬物依存性,毒性などの有害作用に関する科学的根拠を収集することが必須であり,迅速な作用評価システムの構築が重要である.行動薬理学的手法による中枢神経に関する評価法:自発運動量の変化を指標にすることで,薬物の中枢興奮作用もしくは中枢抑制作用の有無を推測できる.また,条件付け場所嗜好性試験による報酬効果の解析から,薬物の精神依存性を予測できる.一方,多くの類縁化合物が存在する場合や催幻覚薬の評価においては,既存の規制薬物を訓練薬物として,その自覚効果の類似性を評価する薬物弁別試験は効率的な手法である.細胞を利用する評価法:薬物の毒性評価に有用である.危険ドラッグの作用点が明確なもの,例えば,合成カンナビノイドであればカンナビノイド受容体であるが,カンナビノイド受容体を強制発現させた細胞による合成カンナビノイドの毒性評価は,迅速かつ高感度での解析が可能である.危険ドラッグの作用点に着目した検出法は,薬物自体の化学構造に依存しない検出法として,化学構造が変化しても有害作用の発現が危惧される「危険性の検出」が可能となり,現場での迅速かつ効果的な流通規制が可能となる.薬物規制のために科学的根拠を収集することは,まさに薬物の作用機序を解明するための基礎研究の一部であると捉えることができる.登場する危険ドラッグは刻一刻と変化することから,新規薬物の検出システムの開発を進めるとともに,薬物乱用防止の啓発および薬物依存症対策の強化が急務である.

総説
  • 武 洲, 中西 博
    2017 年 150 巻 3 号 p. 141-147
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/09
    ジャーナル フリー

    アルツハイマー病の原因として「アミロイドカスケード仮説」が広く支持されている.しかし,これまでこの仮説に基づいてアミロイドβ(Aβ)とその関連分子を標的とした多くの薬剤が開発されてきたが,未だ臨床試験によってその効果が証明された根本治療薬(疾患修飾薬)は得られていない.最近,以前から提唱されていたアルツハイマー病の「脳炎症仮説」ならびに「感染症仮説」に新たなエビデンスも加わり,再び注目されるようになってきた.脳炎症に関与するミクログリアの増殖や生存に必要なコロニー刺激性因子1受容体キナーゼに対する阻害薬がアルツハイマー病モデルマウスにおける学習・記憶障害を予防することが発見され,慢性的脳炎症がアルツハイマー病の進行に伴うものではなくその原因となることを示した.一方,アルツハイマー病患者の剖検脳においてウイルス,細菌ならびに真菌などの病原性微生物が検出され,Aβが感染に対する自然免疫としての役割を果たしている可能性も示唆されている.さらに最近,歯周病菌であるジンジバリス菌のリポ多糖類や主要なプロテアーゼであるジンジパインがミクログリアの活性化を介して慢性的脳炎症を誘引し,認知機能障害に関与することが示唆されている.今後,アルツハイマー病の予防法ならびに根本治療法の確立を目指し,「脳炎症仮説」ならびに「感染症仮説」を再評価するとともにこれらの仮説に基づいた創薬も重要になると考えられる.

創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(17)
  • 武田 真莉子
    2017 年 150 巻 3 号 p. 148-152
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/09
    ジャーナル フリー

    鼻(鼻腔)は,生体にとって呼吸器系の入り口として必要不可欠な部位であると共に薬物投与部位としても古くから利用されてきた.鼻粘膜は低分子のみならず高分子物質に対しても比較的高い透過性を示すため,ペプチドやタンパク質に代表されるバイオ医薬品の投与部位としても利用され,1980年代頃より複数のペプチド薬物が鼻腔内投与製剤化され上市されるに至っている.また解剖学的には,鼻腔内で脳に直接つながっている経路(nose-to-brain経路)があることは古くから知られていたが,近年この経路が難治性中枢疾患治療薬の脳内送達において新たに着目されている.本稿では,鼻腔粘膜の構造と機能および鼻腔を薬物投与経路とする最近の基礎ならびに臨床研究の動向について紹介する.

新薬紹介総説
  • 岩田 博司, 石川 博樹
    2017 年 150 巻 3 号 p. 153-164
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/09
    ジャーナル フリー

    インターフェロン(IFN)を併用しない直接作用型抗ウイルス薬(DAA)のみの治療として,非構造タンパク質5A(NS5A)複製複合体阻害薬であるダクルインザ錠(ダクラタスビル塩酸塩,以下ダクラタスビル)及び非構造タンパク質3/4A(NS3/4A)プロテアーゼ阻害薬であるスンベプラカプセル(アスナプレビル)が,ジェノタイプ1のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変に対して世界で初めて開発され,2014年7月に本邦において承認された.ジメンシー®配合錠(以下,ジメンシー)は,ダクラタスビル及びアスナプレビルに,新規DAAである非構造タンパク質5B(NS5B)ポリメラーゼに対する非核酸型阻害薬のベクラブビル塩酸塩(以下,ベクラブビル)を配合した固定用量配合剤である.ベクラブビルはC型肝炎ウイルス(HCV)のNS5Bポリメラーゼに結合することで,NS5Bによるウイルスリボ核酸(RNA)の合成開始を阻害するDAAであり,作用点の異なるベクラブビルをダクラタスビル及びアスナプレビルに追加することで,in vitroでHCVゲノム排除作用の増強を示した.in vitroにおけるHCV RNAの排除においては,3剤のHCVレプリコン細胞への添加は,同様な濃度倍率の2剤併用に比較して効果的であり,2剤併用時に認められなかったHCVレプリコンの完全な排除が認められた.また,ダクラタスビル,アスナプレビルに耐性を示すNS5A及び非構造タンパク質3(NS3)のアミノ酸置換(それぞれL31M-Y93H及びD168V)を含むジェノタイプ1b変異レプリコン細胞の排除にも効果を示した.国内第Ⅲ相臨床試験の結果,ダクラタスビル/アスナプレビル/ベクラブビル固定用量配合剤(DCV-TRIO)は,1日2回12週間の投与により,ジェノタイプ1a/1bのC型慢性肝炎及び代償性肝硬変の全ての患者に対し96%の投与終了12週後のHCV RNA定量下限未満の割合(SVR12達成割合)を示し,このうちジェノタイプ1bの未治療患者に対するSVR12達成割合もまた96%と,ダクラタスビル/アスナプレビル併用療法(87%)より高かった.また,投与開始前の肝硬変の有無やNS5A耐性変異の有無に関わらず,DCV-TRIO投与群のSVR12達成割合(92%~96%)は高かった.SVR12を達成しなかったジェノタイプ1bの患者はいずれも有害事象又は患者希望による投与4週間未満の中止例であり,高度耐性株(NS3-D168,NS5A-L31+Y93H,NS5B-P495)の出現はみられず,4週間以上投与された患者は全てSVR12を達成した.安全性に関して,DCV-TRIOはおおむね忍容であり,死亡例は認められず,ジェノタイプ1b未治療コホートのDCV-TRIO群とダクラタスビル/アスナプレビル群との間には,重篤な有害事象及び投与中止に至った有害事象の発現割合に大きな違いはなかった.DCV-TRIO群において,Grade 3又は4のALT増加(13.8%),AST増加(9.2%)及び高ビリルビン血症(5.5%)が高い頻度でみられたが,これらは週1回のモニタリングにより管理可能である.以上より,ジメンシー配合錠は,C型慢性肝炎及び代償性肝硬変に対する治療薬として新たな選択肢となり,肝硬変やNS5A耐性を有する患者に対しても有効で,DAA療法で良好な効果が得られなかった患者に対しても治療法の1つとなるものと考えた.

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