日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(22)
創薬におけるヒト肝細胞キメラマウスを用いた薬効,毒性および薬物動態評価の有用性
佐能 正剛太田 茂
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2018 年 151 巻 5 号 p. 213-220

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抄録

高い薬効と安全性を示す医薬品を創出するため,医薬品候補化合物のヒトにおける薬効,安全性や体内動態を予測することは重要である.マウスにヒト肝細胞を移植し肝臓がヒトの肝細胞で置換された「ヒト肝細胞キメラマウス」の有用性が,これら予測モデルとして着目されている.これまでの研究の中で,ヒト肝細胞キメラマウスは,ヒト肝臓で生成される医薬品のヒト代謝物や血漿中濃度推移を予測できる可能性が示唆された.また,安全性評価においては薬剤誘発肝障害の予測に,薬理評価ではウイルス性肝炎などの薬効モデルとしての有用性が提唱されており,血中動態と毒性,薬効発現の関連性の精査や代謝物の寄与も評価できる可能性がある.近年は,現状のヒト肝細胞キメラマウスの問題点を克服するための新しい動物モデルも開発され,医薬品候補化合物の最適化や創薬でのトランスレーショナル研究において,さらに有用性が高まることが期待される.

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