日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
新薬紹介総説
新規NSAIDsエスフルルビプロフェン貼付剤(ロコア®テープ)の薬理学的特長と臨床試験成績
大塚 昇八田羽 幾子
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 151 巻 5 号 p. 221-227

詳細
抄録

Non-steroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)の貼付剤は経口剤の副作用低減を実現し,臨床上欠かせない薬剤となっているが,有効性は経口剤に劣ると位置付けられている.ロコア®テープ(治験コード:SFPP)は強力なシクロオキシゲナーゼ阻害作用と優れた皮膚透過性を有するエスフルルビプロフェン(SFP)を主な有効成分としたNSAIDs貼付剤で,優れた経皮吸収性と組織移行性により既存のNSAIDs貼付剤とは異なった特長を有する薬剤として開発された.ラットを用いた検討で,SFPPは既存のNSAIDs貼付剤に比べ経皮吸収率が高く,強い鎮痛作用と抗炎症作用を示した.臨床薬理学的検討では,SFPPを変形性膝関節症(膝OA)患者の膝に貼付した後の滑膜や関節液で既存のフルルビプロフェン(FP)貼付剤より明らかに高いSFP濃度を示した.また,優れた経皮吸収性から2枚貼付(40 mg×2枚)を続けるとFP経口剤(40 mg×3回)と同程度の血漿中SFP濃度曲線下面積になると推定されたため,本剤の貼付は1日1回,同時に2枚を超えないとされている.臨床試験では,膝OA患者で比較試験を実施して有効性を検討した.主要評価項目としたVisual Analogue Scaleにより評価した椅子からの起立時痛の改善はSFPP(40 mg×1枚/日)でプラセボ,あるいはFP貼付剤(40 mg×2枚/日)より統計学的に有意に優れ,他の有効性評価項目も全てで統計学的に有意に優れた.長期投与試験で膝以外のOAでの有効性も示された.本剤は優れた有効性と体内動態の特徴から,単独での長期使用が予想されるため,52週間まで投与して2枚貼付までの安全性を検討した.201例中161例(80.1%)で52週の貼付を完了した.多く見られた副作用は貼付部位の皮膚症状(46.8%,141部位/301部位)で,中止は4.3%(13部位/301部位)であった.全身性の副作用として,消化器症状と腎機能に関する臨床検査値の異常変動が見られたが,ほとんどが軽度であり,腎機能の低い患者(eGFRが30~59 mL/min/1.73 mm2)でも血清クレアチニンの増加を認めなかった.これらの成績から2015年9月に製造販売承認を得た.本剤が新たな位置付けのNSAIDs貼付剤として保存期OA治療で多くの活躍の場を与えられることを期待したい.

著者関連情報
© 2018 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事
feedback
Top