日本薬理学雑誌
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151 巻 , 5 号
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特集:看護における薬理学教育:卒前・卒後・継続教育のあり方と人材育成
  • 斉藤 しのぶ
    2018 年 151 巻 5 号 p. 186-190
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
    ジャーナル フリー

    看護学士課程教育は,平成29年4月現在,255大学にて行なわれている.資質の高い看護師養成という社会のニーズに対して,大学の取組は様々あるが,その教育の水準を担保することが課題の一つとなっている.文部科学省では,平成29年10月に課題解決に向け,看護学教育モデル・コア・カリキュラムを策定した.各大学においては,これを参考にカリキュラム構築し,教育の質保証に向けた検討が重ねられることを期待する.

  • 赤瀬 智子
    2018 年 151 巻 5 号 p. 191-194
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
    ジャーナル フリー

    患者への投薬は,医師は患者の病態・病状に応じて標準的な治療に従い処方を行う.薬剤師は医師より処方された内容を確認し,患者に対して薬の効果や副作用について説明,あるいは一般的な服薬上の注意について指導を行う.看護師は患者を観察し,投与された薬の効果や有害事象を確認し,医師へ報告する.このように多職種がそれぞれの専門性から役割を担って投薬が行われている.しかし,薬が本来の期待する効果を得るには,その使われ方も考慮すべきである例が臨床現場で多くみられる.例えば,肥満度は経皮吸収に影響するため,BMIによって貼付剤の貼り方を変えることで効果が異なる.また,不規則な食事をしている人は便秘薬の効果は得られにくいが与薬方法は一定である等である.こうした課題に対し,患者の身体,生活,心理状況を包括的に捉え,患者の生活にあった投薬が望まれる.日本の看護における薬理学教育では,薬のメカニズムを知り,治療効果と安全を管理する方法について,つまりcureの視点で教授している.また,成人看護学,老年看護学,母性看護学,小児看護学,精神看護学等の対象別看護では,careの視点から対象の一般的特性による薬効の違い,副作用の特徴,注意点等の教育がされている.しかし,それらcareとcureを融合し,患者個人の身体,生活,心理状況を包括的に,最適な投与方法を考えることができる応用力を身につける視点での教育はされていない.また,薬は西洋薬だけでなく,漢方薬もあり,多くの治療に使用されている.漢方薬の作用メカニズムや投与方法は患者個人の生活習慣に密着しているにもかかわらず,看護分野ではほとんど教育されていない.看護師は,患者の生活状況を多く知っているキーパーソンである.薬について,生活の中の何と関係するのか,患者の何を見ていく必要があるのかの知識や技術を知る必要がある.

  • 佐伯 由香
    2018 年 151 巻 5 号 p. 195-199
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
    ジャーナル フリー

    看護教育において,薬理学や解剖生理学といった基礎医学系の科目は専門基礎科目と位置づけられている.筆者は看護系大学において長年,解剖生理学を担当し,現在では薬理学の一部をも担当している.同じ専門基礎科目として,看護学生に教育する上で,課題となる点はほぼ共通であると考えられる.これまで解剖生理学を教育してきた中で,問題と思われるのは,学生の基礎学力の低下,正確に覚えない,思考が固定化している,の3点である.指示された注射液を何mL注射器に吸えばいいのか,酸素ボンベにどのくらいのO2が残っているのかといった,簡単な計算問題を苦手とする学生が増えている.また,器官や組織がそれぞれ何処に存在して,どのような働きをしているのか正確に覚えない.つまり,「何となく」あるいは「このくらい」という程度に覚えているのである.また,1つのこと(あるいは事象)を1つの側面からしか覚えない.したがって,他の側面から質問をすると答えられなかったり,せっかく学んだ知識を他の知識とつなげたり,関連させて考えることができない.このような問題は,同じ基礎医学の科目である薬理学を教える教員も感じているのではないだろうか.ヒトの体は1つである.whole bodyとして常に考えること,そして解剖生理学や薬理学の知識を看護実践でどのように活用するのか,早いうちに理解させることが重要なのではないかと考える.

  • 柳田 俊彦
    2018 年 151 巻 5 号 p. 200-205
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
    ジャーナル フリー

    1990年代後半から看護系大学の設置が急激に進み,今後もさらに増加する見込みである.卒前卒後の看護学教育における薬理学・臨床薬理学の重要性は言うまでもないが,急激な看護系大学の増加に伴い,薬理学教育に関わる人材の不足は否めない状況にある.看護系大学の教育水準担保のために『看護学教育モデル・コア・カリキュラム』が策定されたことを受け,新しい時代のニーズに対応する看護薬理学学士教育のあり方と「Patient-oriented Pharmacology」の概念に基づいた看護における薬理学教育:integrated Drug(iDrug)について述べる.

受賞講演総説
  • 金丸 和典
    2018 年 151 巻 5 号 p. 206-212
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
    ジャーナル フリー

    アストロサイトは無数の微細突起を伸ばし,アストロサイト同士あるいは他の脳細胞と非常に多くの領域をもって接するグリア細胞の一種である.アストロサイトがシナプス伝達・脳血流・神経細胞死などの幅広い生理・病理機能に寄与することが先行研究により明らかになってきているが,その機能や機能発現メカニズムには未解明な点を多く残している.アストロサイトは活動電位を発生しない非興奮性細胞であるため,電気生理学的手法を用いてリアルタイムに活動を検出することは困難であるが,蛍光Ca2+インジケーターを細胞内に導入し,細胞内Ca2+濃度変化(Ca2+シグナル)を観察することにより活動をモニターすることができる.また,アストロサイトのCa2+シグナル形成に重要なイノシトール三リン酸(IP3)受容体とその関連シグナル分子を人為的に制御した際のフェノタイプを解析すれば,アストロサイトの機能に迫ることができる.本稿では,このような手法を用いて著者らが見出してきた知見を紹介する.

創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(22)
  • 佐能 正剛, 太田 茂
    2018 年 151 巻 5 号 p. 213-220
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
    ジャーナル フリー

    高い薬効と安全性を示す医薬品を創出するため,医薬品候補化合物のヒトにおける薬効,安全性や体内動態を予測することは重要である.マウスにヒト肝細胞を移植し肝臓がヒトの肝細胞で置換された「ヒト肝細胞キメラマウス」の有用性が,これら予測モデルとして着目されている.これまでの研究の中で,ヒト肝細胞キメラマウスは,ヒト肝臓で生成される医薬品のヒト代謝物や血漿中濃度推移を予測できる可能性が示唆された.また,安全性評価においては薬剤誘発肝障害の予測に,薬理評価ではウイルス性肝炎などの薬効モデルとしての有用性が提唱されており,血中動態と毒性,薬効発現の関連性の精査や代謝物の寄与も評価できる可能性がある.近年は,現状のヒト肝細胞キメラマウスの問題点を克服するための新しい動物モデルも開発され,医薬品候補化合物の最適化や創薬でのトランスレーショナル研究において,さらに有用性が高まることが期待される.

新薬紹介総説
  • 大塚 昇, 八田羽 幾子
    2018 年 151 巻 5 号 p. 221-227
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
    ジャーナル フリー

    Non-steroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)の貼付剤は経口剤の副作用低減を実現し,臨床上欠かせない薬剤となっているが,有効性は経口剤に劣ると位置付けられている.ロコア®テープ(治験コード:SFPP)は強力なシクロオキシゲナーゼ阻害作用と優れた皮膚透過性を有するエスフルルビプロフェン(SFP)を主な有効成分としたNSAIDs貼付剤で,優れた経皮吸収性と組織移行性により既存のNSAIDs貼付剤とは異なった特長を有する薬剤として開発された.ラットを用いた検討で,SFPPは既存のNSAIDs貼付剤に比べ経皮吸収率が高く,強い鎮痛作用と抗炎症作用を示した.臨床薬理学的検討では,SFPPを変形性膝関節症(膝OA)患者の膝に貼付した後の滑膜や関節液で既存のフルルビプロフェン(FP)貼付剤より明らかに高いSFP濃度を示した.また,優れた経皮吸収性から2枚貼付(40 mg×2枚)を続けるとFP経口剤(40 mg×3回)と同程度の血漿中SFP濃度曲線下面積になると推定されたため,本剤の貼付は1日1回,同時に2枚を超えないとされている.臨床試験では,膝OA患者で比較試験を実施して有効性を検討した.主要評価項目としたVisual Analogue Scaleにより評価した椅子からの起立時痛の改善はSFPP(40 mg×1枚/日)でプラセボ,あるいはFP貼付剤(40 mg×2枚/日)より統計学的に有意に優れ,他の有効性評価項目も全てで統計学的に有意に優れた.長期投与試験で膝以外のOAでの有効性も示された.本剤は優れた有効性と体内動態の特徴から,単独での長期使用が予想されるため,52週間まで投与して2枚貼付までの安全性を検討した.201例中161例(80.1%)で52週の貼付を完了した.多く見られた副作用は貼付部位の皮膚症状(46.8%,141部位/301部位)で,中止は4.3%(13部位/301部位)であった.全身性の副作用として,消化器症状と腎機能に関する臨床検査値の異常変動が見られたが,ほとんどが軽度であり,腎機能の低い患者(eGFRが30~59 mL/min/1.73 mm2)でも血清クレアチニンの増加を認めなかった.これらの成績から2015年9月に製造販売承認を得た.本剤が新たな位置付けのNSAIDs貼付剤として保存期OA治療で多くの活躍の場を与えられることを期待したい.

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