日本薬理学雑誌
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特集:遺伝子改変マウスを用いた新しい創薬・薬理学研究の展開
敗血症性臓器障害におけるヒスタミンの役割:ヒスタミン関連遺伝子ノックアウトマウスを用いた検討
服部 裕一
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2018 年 152 巻 1 号 p. 10-15

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抄録

ヒスタミンは,生体内において,炎症,アレルギー反応,胃液分泌,神経伝達など,多岐にわたる生理活性作用を有し,これら作用はGタンパク質共役型ヒスタミン受容体を介して引き起こされるが,これまでにH1,H2,H3,H4の4種類のヒスタミン受容体が同定されている.1990年代の終わりから,次々と,これらヒスタミン受容体を欠損させた,あるいはヒスタミン合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)を欠損させた,ヒスタミン関連遺伝子のノックアウトマウスが開発され,ヒスタミンの新たな生理的,病態薬理学的役割が見出されている.敗血症は,高齢者人口の増加,悪性腫瘍や移植時の化学療法などによる免疫機能の低下,多剤耐性菌の出現などにより,症例数は増加の一途をたどり,現在においてもなお高い死亡率を有している.現在,敗血症は,感染に対する制御不能な宿主反応による生命に関わる臓器不全と定義されるようになったが,急性肺傷害をはじめとする敗血症性臓器不全の発症・進展機構は,未だ十分に理解されていない.敗血症病態においてヒスタミンの血中レベルが上昇するという報告は古くから知られており,ヒスタミンが敗血症病態の修飾に関与し,ヒスタミンが敗血症による主要臓器の組織傷害の進展に寄与している可能性が想定される.本稿では,HDCノックアウトマウスと,H1およびH2受容体ダブルノックアウトマウスを用いて,盲腸結紮穿孔により多菌性敗血症にしたときの主要臓器における組織傷害の程度の,ヒスタミンが欠損している場合,そして,H1およびH2受容体が欠損している場合での修飾的変化について紹介し,敗血症性臓器障害におけるヒスタミンの役割について考察する.

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