日本薬理学雑誌
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特集:脳における善玉・悪玉としてのレドックスシグナルと脳疾患・老化への新たなアプローチ
新規高分子チオールラベル化剤を用いたタンパク質チオールの解析とその応用
立中 佑希
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2018 年 152 巻 5 号 p. 223-226

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抄録

タンパク質は,様々な翻訳後修飾を受けることにより,その機能がコントロールされている.タンパク質システインのチオール基修飾は,代表的な翻訳後修飾の一つであり,生体内のレドックス変化に応答して生じる.タンパク質S-ニトロシル化は,一酸化窒素(NO)によって起こる重要な翻訳後修飾であり,転写やタンパク質発現,シグナル伝達などの様々な細胞機能の制御に関与していることが明らかにされている.チオール基の酸化還元状態を検出する手法の一つに,チオール基と反応するマレイミド試薬を用いてゲル電気泳動によるゲルシフトアッセイ法が利用されているが,この手法を用いることでタンパク質中のフリーのチオール基数を可視化することができる.マレイミドAMSおよびポリエチレングリコール-マレイミドPEG-Malは,一般に,タンパク質の還元状態と酸化状態とを区別するために使用されてきた.しかしこれらには課題があり,我々はこれらを克服した新規高分子チオールラベル化剤PEG-PCMalを開発した.PEG-PCMalは従来のマレイミド試薬より,バンドがシャープで大きい移動度をもち解析が容易である.さらに,光切断可能なPC(photo cleavable)リンカーを有し,電気泳動後のゲルにUV光を照射することで,ラベル化されたタンパク質からPEG鎖を切り離すことができるため,PEG鎖の影響を受けることなく,目的タンパク質をウエスタンブロットで検出することが可能である.本研究では,新しいマレイミド試薬PEG-PCMalを用いたタンパク質S-ニトロシル化の解析を試みた.

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