日本薬理学雑誌
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特集:進化する骨粗鬆症治療薬 国内患者1,300万人のQOL向上へ
骨形成促進作用をもつビスホスホネートMPMBPの開発
鈴木 恵子長岡 正博五十嵐 薫篠田 壽
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2019 年 153 巻 1 号 p. 4-10

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抄録

ビスホスホネート製剤(bisphosphonate(s):BP,BPs)は,P-C-P結合を基本骨格とする骨吸収抑制薬であり,骨吸収が亢進した病態に対して,最も信頼できる治療薬として使用されている.P-C-Pの中心炭素原子に付加される側鎖の違いにより,薬理作用や作用機序などが大きく異なるが,その構造中に窒素原子をもつかどうかで,窒素含有BPs(nitrogen-containing BPs:NBPs)と,窒素非含有BPs(non-NBPs)に大別される.筆者らは,既存のBPsについて構造活性相関を研究する過程で,新規のnon-NBPである[4-(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホネート(MPMBP)が,歯周病原因菌などの菌体成分であるリポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)刺激による炎症メディエーター産生を抑制することを確認した.この抗炎症作用はMPMBPがもつメチルチオフェニルチオ基の抗酸化活性によるものと推測されたため,in vitro,in vivoの両面から骨形成作用について検討した.その結果,1)培養骨芽細胞のアルカリホスファターゼ活性および骨形成関連遺伝子の発現を有意に上昇させ,2)培養頭蓋冠のコラーゲン合成および石灰化を促進し,3)正常ラット・ウサギ上顎歯槽骨への局所投与で骨を新生するなど,既存のBPsでは報告されていない骨形成促進効果を有することを見出した.すなわちMPMBPはBPに共通する骨吸収抑制作用に加えて,抗酸化作用および抗炎症作用に基づく骨形成促進作用を併せ持つ化合物であることから,有効かつ安全なBPとして骨粗鬆症治療に応用できる可能性があると考えられる.さらに局所投与部位の炎症反応を抑制し,新生骨を形成することから,高頻度に細菌感染が起こる口腔内において,骨欠損部での骨の増生や再生に応用することも視野にいれて基礎研究を進めている.

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