日本薬理学雑誌
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特集:いよいよ薬理学エデュケーター認定制度が始まります
薬学部における薬理学教育の現状と課題
久米 利明
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2019 年 153 巻 3 号 p. 107-110

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抄録

薬学部においておよそ12年前の2006年から6年制教育が開始され,現在では薬学部在籍学生の90%以上が6年制課程に属しており,すっかり定着した.しかし,新しい教育制度が進行する中で,いくつかの課題が指摘されてきており,修正を行いながら今後も進めていく必要がある.薬学教育を取り巻く環境が変化を遂げる中,薬理学教育も時流に合わせてより進化していく必要があると考えられる.病態形成機序に基づいた治療薬開発が広がりを見せる一方で,未だに作用機序が解明されていない薬物も多数あり,これらを体系的に取り扱って教育する学問として薬理学の重要性は増している.さらに,医療人としての薬学生は,薬理学的観点から対象となる薬物が臨床でどのように用いられるか,またどのような副作用を予想する必要があるか理解することもまた重要である.このためには薬理学者が絶えず臨床での薬物治療学の動向を把握し,それを薬理学の視点から学生に習得させる必要がある.今後の課題としては,他領域,特に薬物治療学との連携の強化を行い,実際の臨床現場の最新の薬物治療を大学教育にフィードバックすることができる人材との適切な連携が必要となってくるであろう.加えて,大学院博士課程への進学数を増加させることが喫緊の課題となっている.現状では,学位を取得しかつ薬剤師免許を有する人材の枯渇へとつながっていくことが懸念されており,早急な対策が必要である.

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