日本薬理学雑誌
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153 巻 , 3 号
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特集:いよいよ薬理学エデュケーター認定制度が始まります
  • 池谷 裕二
    2019 年 153 巻 3 号 p. 99-102
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
    ジャーナル フリー

    日本薬理学会では2019年より優れた薬理学教育者を育成・支援するために薬理学エデュケーター認定制度を発足します.本学会には,基礎科学を主体として活動している研究者のみならず,学生教育において指導的立場にある教員が多く参加し,薬理学に尽力しています.優れた教育能力を備えた人材をさらに社会に送り出し,多くの学生が高水準の薬理学教育を受けられるよう教育界に貢献するために,本制度を設置しました.本稿では,この制度の実施要項,すなわち目的や登録基準,出願手順について説明します.

  • 五嶋 良郎
    2019 年 153 巻 3 号 p. 103-106
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
    ジャーナル フリー

    日本では,明治以降,政府はドイツ人医師を教官として招聘し,以後,その体系の元に教育の骨格が矢継ぎ早に形作られていったと言われている.しかし,海外からの医学の導入に性急に過ぎ,その本質を踏まえ,我が国独自の医療システム,医学の有り様を模索することが十分ではなかったのではないかと指摘されている.原点に立ち帰れば,医学・医療の現場における医師における役割は,患者の予防,診断,治療という医療の実践の担い手として,その先導的役割を果たすこと,それに伴う諸課題に対して新たな創造に挑戦していく責務を負うことであろう.こうした視点から,今後ますます,様々な外的要因をあくまで十分に咀嚼した上で,医学部における薬理学教育を改めて実践の場から体系づける努力が必要と考えられる.

  • 久米 利明
    2019 年 153 巻 3 号 p. 107-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
    ジャーナル フリー

    薬学部においておよそ12年前の2006年から6年制教育が開始され,現在では薬学部在籍学生の90%以上が6年制課程に属しており,すっかり定着した.しかし,新しい教育制度が進行する中で,いくつかの課題が指摘されてきており,修正を行いながら今後も進めていく必要がある.薬学教育を取り巻く環境が変化を遂げる中,薬理学教育も時流に合わせてより進化していく必要があると考えられる.病態形成機序に基づいた治療薬開発が広がりを見せる一方で,未だに作用機序が解明されていない薬物も多数あり,これらを体系的に取り扱って教育する学問として薬理学の重要性は増している.さらに,医療人としての薬学生は,薬理学的観点から対象となる薬物が臨床でどのように用いられるか,またどのような副作用を予想する必要があるか理解することもまた重要である.このためには薬理学者が絶えず臨床での薬物治療学の動向を把握し,それを薬理学の視点から学生に習得させる必要がある.今後の課題としては,他領域,特に薬物治療学との連携の強化を行い,実際の臨床現場の最新の薬物治療を大学教育にフィードバックすることができる人材との適切な連携が必要となってくるであろう.加えて,大学院博士課程への進学数を増加させることが喫緊の課題となっている.現状では,学位を取得しかつ薬剤師免許を有する人材の枯渇へとつながっていくことが懸念されており,早急な対策が必要である.

  • 柳田 俊彦
    2019 年 153 巻 3 号 p. 111-116
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
    ジャーナル フリー

    1990年代後半から看護系大学の設置が急激に進み,2018年現在で263校となり,今後もさらに増加する見込みである.卒前卒後の看護学教育における薬理学・臨床薬理学の重要性は言うまでもないが,専門看護師教育,認定看護師教育,さらには特定行為に係る看護行為の研修においても,臨床薬理学教育は必修となっている.その一方で,急激な看護系大学の増加に伴い,薬理学教育に関わる人材の不足は否めない状況にある.「Patient-oriented Pharmacology」の概念に基づいた看護における薬理学教育を充実させることは,薬物治療の質向上,患者の満足度の向上に有効であり,今後は,薬理学と看護の様々な領域の相互理解・相互協力のもと,看護師を対象とした薬理学教育プログラムの提供を行うことが重要である.

総説
  • 斎藤 将樹, 佐藤 岳哉
    2019 年 153 巻 3 号 p. 117-123
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
    ジャーナル フリー

    一次繊毛は細胞膜が突出して形成される不動性の繊毛で,一細胞につき一本のみ形成される.当初は細胞外に突出しているだけの静的な細胞小器官だと思われていたが,種々の研究成果により,細胞周期に依存して形成と短縮・消失を繰り返すダイナミックな性質をもつことが明らかとなってきた.一次繊毛は非常に短く表面積も小さいにもかかわらず,一次繊毛膜上には特異的に分布するGタンパク質共役型受容体,増殖因子受容体やイオンチャネルがあるため,選択的な生理活性物質や機械刺激を受容するシグナル受容器として働く.そのため,一次繊毛の形成異常や機能破綻は,小頭症,嚢胞腎,内臓逆位や多指症に代表される種々の臓器形成不全等を所見とする,先天性の遺伝子疾患「繊毛病」の発症につながる.繊毛病に対する有効な治療法は開発されていない.近年,一次繊毛の形成や機能の分子制御機構が解明されるにつれて,多種多様の分子が巧妙な機構によって一次繊毛の形成,シグナル伝達や短縮・消失のサイクルを制御することが明らかになり,一次繊毛の特殊性と重要性が理解されてきた.しかし,それら分子制御機構の全容解明には遠く及ばないのが現状である.繊毛病の病因解明のため,分子制御機構がさらに解明されることが必要であり,また将来,有効な治療法が薬理学研究を中心として開発されることが期待される.

創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(28)
  • 齊藤 隆太
    2019 年 153 巻 3 号 p. 124-128
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
    ジャーナル フリー

    創薬における意思決定の質や効率性の改善を目的として数理モデルが活用されており,ターゲット分子同定,トランスレーショナル研究,他剤との差異化,臨床試験デザインなど様々な創薬の課題解決に貢献してきた.近年,この数理モデルを用いた創薬アプローチはmodel-informed drug discovery and development(MID3)と呼ばれ,その中心的技術であるQuantitative Systems Pharmacology(QSP)が注目されている.QSPは薬物,疾患,個体差などの創薬に関わる様々なデータを統合したモデリング&シミュレーションを技術基盤とした新しい学術領域である.本論文では,QSPが薬物の作用メカニズムの解明に貢献した我々の解析事例,①抗トロンビン薬,②内分泌かく乱物質,を紹介することでQSPの有用性を示し,より活用されていくための課題について議論する.

新薬紹介総説
  • 池田 尚紀, 谷口 真也, 関 光徳
    2019 年 153 巻 3 号 p. 129-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
    ジャーナル フリー

    エロビキシバット(グーフィス®錠5 mg)は,胆汁酸の再吸収に係わるトランスポーター(IBAT)の阻害作用を有する新規低分子化合物であり,慢性便秘症を適応として世界で初めて日本で承認された.エロビキシバットはin vitroで選択的にIBATを阻害し,in vivoで用量依存的に胆汁酸の吸収抑制作用を示し,ラットロペラミド誘発便秘モデルにおいて糞便湿重量を用量依存的に増加させた.エロビキシバットの経口投与時の全身曝露量は低く,ほとんどが糞便中に排泄された.また,薬物相互作用試験の結果からエロビキシバットがP-糖タンパク質に対して軽度な阻害作用を有する可能性が示唆された.慢性便秘患者を対象とした国内第Ⅱ相試験にてプラセボ及びエロビキシバット5,10,15 mgの3用量を1日1回朝食前に経口投与したところ,10及び15 mg群ではプラセボ群に対して自発排便回数が有意に増加し,エロビキシバット10及び15 mg経口投与の慢性便秘患者に対する有効性が示唆された.また,15 mgまでの忍容性は許容し得るものと考えられたことから,1日1回経口投与における臨床推奨用量は10 mgと判断した.慢性便秘患者を対象とした国内第Ⅲ相試験では,主要評価項目として設定した「投与期間第1週における自発排便回数の観察期間第2週からの変化量」において,エロビキシバット10 mgのプラセボに対する優越性が検証された.エロビキシバットを52週間慢性便秘患者に投与した国内長期投与試験では,便秘に関連する症状への改善効果は投与期間第1週より認められ,第52週まで良好に維持された.また,1日1回52週間投与の安全性及び忍容性に問題はないものと考えられた.エロビキシバットは既存の便秘治療薬のいずれとも異なる作用機序を有することから,慢性便秘症に対する新たな治療選択肢の一つになることが期待される.

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