日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
胆汁酸トランスポーター阻害薬エロビキシバット(グーフィス®錠5 mg)の薬理学的特性及び臨床試験成績
池田 尚紀谷口 真也関 光徳
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2019 年 153 巻 3 号 p. 129-138

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抄録

エロビキシバット(グーフィス®錠5 mg)は,胆汁酸の再吸収に係わるトランスポーター(IBAT)の阻害作用を有する新規低分子化合物であり,慢性便秘症を適応として世界で初めて日本で承認された.エロビキシバットはin vitroで選択的にIBATを阻害し,in vivoで用量依存的に胆汁酸の吸収抑制作用を示し,ラットロペラミド誘発便秘モデルにおいて糞便湿重量を用量依存的に増加させた.エロビキシバットの経口投与時の全身曝露量は低く,ほとんどが糞便中に排泄された.また,薬物相互作用試験の結果からエロビキシバットがP-糖タンパク質に対して軽度な阻害作用を有する可能性が示唆された.慢性便秘患者を対象とした国内第Ⅱ相試験にてプラセボ及びエロビキシバット5,10,15 mgの3用量を1日1回朝食前に経口投与したところ,10及び15 mg群ではプラセボ群に対して自発排便回数が有意に増加し,エロビキシバット10及び15 mg経口投与の慢性便秘患者に対する有効性が示唆された.また,15 mgまでの忍容性は許容し得るものと考えられたことから,1日1回経口投与における臨床推奨用量は10 mgと判断した.慢性便秘患者を対象とした国内第Ⅲ相試験では,主要評価項目として設定した「投与期間第1週における自発排便回数の観察期間第2週からの変化量」において,エロビキシバット10 mgのプラセボに対する優越性が検証された.エロビキシバットを52週間慢性便秘患者に投与した国内長期投与試験では,便秘に関連する症状への改善効果は投与期間第1週より認められ,第52週まで良好に維持された.また,1日1回52週間投与の安全性及び忍容性に問題はないものと考えられた.エロビキシバットは既存の便秘治療薬のいずれとも異なる作用機序を有することから,慢性便秘症に対する新たな治療選択肢の一つになることが期待される.

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