日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(31)
ヒト肝細胞の3次元培養スフェロイドモデルの新展開
荻原 琢男細野 麻友小島 肇
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2019 年 153 巻 5 号 p. 235-241

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抄録

3次元(3D)培養肝細胞スフェロイドが,薬物代謝,毒性および酵素誘導の新しい評価として注目されている.ヒト肝細胞をスフェロイド用プレートに播種し細胞形態およびアルブミン分泌を検討したところ,肝細胞スフェロイドは播種後21日間維持されることが確認された.このスフェロイドに薬物を曝露した結果,第Ⅰ相および第Ⅱ相酵素による連続的な代謝反応およびヒト特有の代謝反応が認められた.また,このスフェロイドを用いて肝毒性を評価した結果,アルブミン分泌の50%阻害濃度は従来評価法よりも低く,従来評価法が肝毒性を過小評価している可能性が示唆された.さらに,このスフェロイドを用いて各種シトクロムP450(CYP)の誘導能を調べたところ,各種CYPのmRNA発現量および活性は有意に増加した.以上より,この3D肝細胞スフェロイドは,薬物代謝過程の追跡,肝毒性および酵素活性誘導の長期試験に適していることが示された.

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© 2019 公益社団法人 日本薬理学会
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