日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
肝細胞がんに対するレンバチニブ(レンビマカプセル4 mg)の抗腫瘍メカニズムと臨床試験成績
渡辺 達夫小山 則行
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2019 年 153 巻 5 号 p. 242-248

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抄録

レンバチニブメシル酸塩(以下,レンバチニブ)は,経口投与可能な受容体チロシンキナーゼ阻害薬であり,血管内皮増殖因子受容体1~3,線維芽細胞増殖因子受容体1~4,血小板由来増殖因子受容体α,rearranged during transfectionチロシンキナーゼ,幹細胞因子受容体を阻害する.肝細胞がんに対するin vitro及びマウスモデルでの抗腫瘍効果の解析から,レンバチニブは血管内皮増殖因子及び線維芽細胞増殖因子で誘導される腫瘍血管新生の阻害と線維芽細胞増殖因子によるがん細胞増殖の阻害により肝細胞がんに対する抗腫瘍効果を発揮すると考えられた.日韓で実施された肝細胞がん患者を対象にした臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験において,肝細胞がん患者に対する推奨用量が検討され,優れた有効性が示唆された.肝細胞がん患者では固形がん患者と比較して,体重とAUCが強く相関することが明らかになり,その後の臨床試験における開始用量は,体重60 kg未満の患者では8 mg,60 kg以上では12 mgと決定された.第Ⅲ相試験において,主要評価項目である全生存期間でのソラフェニブに対する非劣性が証明され,副次評価項目である無増悪生存期間,奏効率などがソラフェニブに対して有意に優れていた.この結果を受けて昨年,日本,米国,欧州,中国などにおいて,1次治療における「切除不能な肝細胞がん」の適応症で承認された.現在,肝細胞がんを対象に肝動脈化学塞栓療法との併用や免疫チェックポイント阻害薬との併用が検討されており,今後さらに多くの肝細胞がん患者の治療に貢献すると期待されている.

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