日本薬理学雑誌
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特集:アレルゲン免疫療法の薬理学
統合比較解析で見えてきたアレルゲン免疫療法の作用メカニズム
神沼 修後藤 穣大久保 公裕中谷 明弘廣井 隆親
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2019 年 154 巻 1 号 p. 23-27

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抄録

アレルゲン免疫療法は,1960年代より行われてきた皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)の時代から,その高い有効性と,各種アレルギー疾患治療法の中でほぼ唯一「根治」が見込める治療法として,その評価が確立されてきた.さらに近年,SCITにおける煩雑な抗原投与法を大幅に改良した舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)薬が登場したことによって,2014年のシダトレンを皮切りに毎年のように新薬が上市される等,アレルギー性鼻炎の治療はまさにパラダイムシフトの時代を迎えている.一方その長い歴史の中で,アレルゲン免疫療法がどのようにして根治も目指せる高い有効性を発揮できるのか,その作用メカニズムの解析も進められてきたが,現在に至るまでその全容は解明されていない.今のところ,アレルゲンのIgE結合を阻害する抑制性抗体の産生や,Th1/Th2バランスの正常化,制御性T細胞の誘導等が,主たるメカニズムとして有力とされるが,それらを否定する報告も多い.われわれも最近,スギ花粉症を対象としたSLITの臨床研究を実施した中で,そのメカニズムの解明に挑戦した.特に,通常行われるプラセボとの比較ではなく,実薬を投与されていながら高い有効性を示した著効患者と,全く効果のみられなかった無効患者間での比較を行うことによって,さらに単一のパラメータ間ではなく,多くのパラメータを統合的に比較解析することによって,これまで知られていなかった,SLITの作用メカニズムに結びつく生体応答カスケードを含めた作用点が浮かび上がってきた.本稿では,アレルゲン免疫療法が有効性を発揮する作用メカニズムについて,われわれの最近の解析結果を紹介しながら論じてみたい.

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