日本薬理学雑誌
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特集:健康寿命の延伸に向けた生活習慣病とがん研究の新展開
多臓器に着目したインターロイキン-19による新規炎症調節機能
藤本 泰之東 泰孝
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2019 年 154 巻 2 号 p. 66-71

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抄録

生体の恒常性は神経系と内分泌系の二大ネットワークにより維持されるのは周知の事実であるが,サイトカインをシグナル伝達物質とする免疫系のネットワークは生体の恒常性維持のみならず,炎症性疾患の病態形成に特に重要である.近年,先進国を中心に患者数の増加が著しいメタボリックシンドロームに代表される代謝性疾患においてもサイトカイン応答を機転とする炎症応答が病態の発生・進展に関与する報告がなされており,従来の病態発症機構とは異なる視点からの理解が進みつつある.これらサイトカインおよびその下流シグナルを新しい標的とした治療薬開発が期待され,事実,世界中で開発競争が熱を帯びてきている.今回,数多くあるサイトカインの中でもIL-19の各種炎症関連疾患に対する新規機能について概説する.IL-19はESTアッセイによりIL-10のホモログとして同定されたサイトカインである.同定の経緯よりIL-19はIL-10ファミリーに分類され,IL-20,IL-24およびIL-26と共にIL-20サブファミリーを形成する.各種研究成果の内,IL-19はTh2応答に対して増強作用を示すことから,アレルギー疾患等のTh2関連疾患への関与が示唆されている.近年では,Th17応答に伴うIL-19産生が乾癬の病態形成に寄与する報告が複数の異なる研究グループから相次いでいること,またIL-19投与が種々の炎症病態に対して抗炎症作用を示し,病態を改善することも報告されている.これまでのところ,IL-19は病態依存的に炎症促進あるいは抗炎症作用を発揮することから,IL-19は生体において多面的な作用を有する重要なサイトカインの一つであることが明らかとなってきた.本総説では,種々の炎症関連疾患(乾癬,アトピー性皮膚炎,関節リウマチおよび炎症性腸疾患)におけるIL-19発現動態および機能について近年の新規知見を概説する.

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