日本薬理学雑誌
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154 巻 , 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集:健康寿命の延伸に向けた生活習慣病とがん研究の新展開
  • 臼井 達哉, 佐々木 一昭
    2019 年 154 巻 2 号 p. 50-55
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/10
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    大腸がんは肺がん,胃がんに次ぐ死亡率の高いがんであり,罹患率,死亡率共に増加傾向にあるアンメットメディカルニーズの高い疾患である.進行性大腸がん患者では,治療開始初期には併用化学療法の効果がある程度認められるが,薬物耐性細胞の出現によりその効果が徐々に失われることから,大腸がんの5年生存率は依然として低い.また,大腸がん組織にはがん細胞に加えて,線維芽細胞,血管内皮細胞,免疫細胞,がん幹細胞が含まれており,転移の発症や,抗がん薬治療に対する耐性を引き起こすトリガーになると考えられている.しかしながら,生体内のさまざまな細胞が存在する組織環境(がん微小環境)をin vitroの系で再現する実験モデルがこれまで存在しなかったために,患者個々人の抗がん薬抵抗性を克服する薬剤の開発は極めて困難である.本総説では,大腸がんの薬物治療の現状と課題について概説するとともに,我々が開発したヒト大腸組織由来エアリキッドインターフェイスオルガノイド培養法を用いた新規治療薬開発に向けた研究を紹介する.

  • 向田 昌司
    2019 年 154 巻 2 号 p. 56-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル 認証あり

    Peroxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)は,糖・脂質代謝の調節に関わる核内転写因子である.PPARγ作動薬であるチアゾリジンジオン系薬剤(TZDs)は脂肪組織における糖取り込みの促進による血糖低下作用を持つことから2型糖尿病の治療薬として汎用されているのみならず,降圧作用や抗動脈硬化作用などの血管保護効果を有する.同様に,PPARγ変異体(P467L,V290Mなど)を有する患者においては,インスリン抵抗性に加え早期高血圧が発症することからも,代謝調節以外のPPARγの作用が注目されている.一方,PPARγは全身で広く発現していることから,TZDsの副作用として体重増加,体液貯留及び骨折のリスク増加などが知られており,それぞれの臓器におけるPPARγの役割とその詳細な作用機序の解明は,副作用のない薬剤を開発する上で喫緊の課題である.本稿では,これまでに知られている循環器疾患におけるPPARγの役割について血管を中心に概説する.

  • 新 真智, 井澤 武史, 桑村 充, 山手 丈至
    2019 年 154 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル 認証あり

    慢性肝疾患(CLD)は進行性の難治性疾患であり,その病因の一つである非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は生活習慣病を基盤として発症する肝疾患であり,肝硬変や肝がんの最も重要な原疾患になりつつある.鉄は生物に必須の微量栄養素で,生体内で排泄機構を持たないため,ひとたび鉄が過量になると過剰鉄は肝臓,心臓,内分泌器官などに蓄積し,酸化ストレスを介して臓器・組織の傷害や機能不全を惹起する.ヒトCLDにおいて鉄過剰は少なからず認められる所見でNAFLD患者の約1/3に肝臓の鉄蓄積が認められる.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者においても,肝臓の鉄蓄積と組織学的重症度の増加に正の相関があることが報告され,鉄過剰はNASHの病態進展に寄与している可能性がある.ラットの高脂肪・鉄過剰食長期給餌実験モデルにおいて,高脂肪食の単独給餌によってヒトNASHに類似したアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)優位な肝逸脱酵素の上昇を伴う肝実質の炎症が経時的に認められるが,高脂肪・鉄過剰食の給餌によって炎症性サイトカインの発現上昇を伴う炎症の増悪が示される.また,この高脂肪食・鉄過剰食給餌群の肝臓では,病変部のクッパー細胞やマクロファージに強い鉄沈着がみられ,これらの細胞への鉄蓄積によってNASH様炎症が増悪する可能性が示唆された.一方で,肝毒性物質であるチオアセトアミド(TAA)の反復投与によるラット肝硬変モデルでは,TAA単独投与群にみられる肝線維化・肝硬変の進展が,TAA・鉄過剰食投与群において著しく抑制される.すなわち,ある種の条件下では,鉄過剰は肝疾患に対して促進的にも抑制的にも働きうると考えられる.本論文では,NAFLD/NASHの発現・進展に関わる鉄過剰の役割について,最新の知見を交えて紹介したい.

  • 藤本 泰之, 東 泰孝
    2019 年 154 巻 2 号 p. 66-71
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル 認証あり

    生体の恒常性は神経系と内分泌系の二大ネットワークにより維持されるのは周知の事実であるが,サイトカインをシグナル伝達物質とする免疫系のネットワークは生体の恒常性維持のみならず,炎症性疾患の病態形成に特に重要である.近年,先進国を中心に患者数の増加が著しいメタボリックシンドロームに代表される代謝性疾患においてもサイトカイン応答を機転とする炎症応答が病態の発生・進展に関与する報告がなされており,従来の病態発症機構とは異なる視点からの理解が進みつつある.これらサイトカインおよびその下流シグナルを新しい標的とした治療薬開発が期待され,事実,世界中で開発競争が熱を帯びてきている.今回,数多くあるサイトカインの中でもIL-19の各種炎症関連疾患に対する新規機能について概説する.IL-19はESTアッセイによりIL-10のホモログとして同定されたサイトカインである.同定の経緯よりIL-19はIL-10ファミリーに分類され,IL-20,IL-24およびIL-26と共にIL-20サブファミリーを形成する.各種研究成果の内,IL-19はTh2応答に対して増強作用を示すことから,アレルギー疾患等のTh2関連疾患への関与が示唆されている.近年では,Th17応答に伴うIL-19産生が乾癬の病態形成に寄与する報告が複数の異なる研究グループから相次いでいること,またIL-19投与が種々の炎症病態に対して抗炎症作用を示し,病態を改善することも報告されている.これまでのところ,IL-19は病態依存的に炎症促進あるいは抗炎症作用を発揮することから,IL-19は生体において多面的な作用を有する重要なサイトカインの一つであることが明らかとなってきた.本総説では,種々の炎症関連疾患(乾癬,アトピー性皮膚炎,関節リウマチおよび炎症性腸疾患)におけるIL-19発現動態および機能について近年の新規知見を概説する.

創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(34)
  • 岩尾 岳洋, 松永 民秀
    2019 年 154 巻 2 号 p. 72-77
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/10
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    肝臓および小腸は薬物の代謝や吸収,排泄に関与する臓器として薬物動態においては非常に重要である.したがって,医薬品開発においては薬物代謝酵素や薬物トランスポーターの寄与を含めて,これらの臓器における薬物動態をより正確に評価する必要がある.現在,この評価のためにさまざまな評価系が用いられているが,それぞれの評価系には少なからず課題が存在する.そこで,既存の評価系に加えて新たな評価系としてヒトiPS細胞由来肝細胞および小腸上皮細胞の開発に向けた研究が進められている.ヒトiPS細胞は多分化能とほぼ無限の増殖能を有することから,ヒト正常組織細胞と類似した性質を有する高品質の細胞を安定して供給することが可能になると考えられる.本稿では,ヒトiPS細胞由来肝細胞および小腸上皮細胞の分化誘導研究の現状と,薬物動態学的機能を中心としたこれらの細胞の有する特徴について概説する.

創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(35)
  • 田中 利男, 小岩 純子
    2019 年 154 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/10
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    21世紀の本格的ゲノム創薬時代に突入してからも,難治性疾患(アンメットメディカルニーズ)に対する画期的治療薬(First-in-Class)開発は,困難を極めてきたが,米国FDAに承認された62%の画期的新薬は,フェノタイプスクリーニングにより見出されている.次世代ゼブラフィッシュ創薬は,ハイスループットin vivoフェノタイプスクリーニングを可能にし,現在グローバルな創薬戦略にインパクトを与えている.高度免疫不全マウスに比較して,ゼブラフィッシュによる患者がん移植の生着率の高さや生着速度の速さから,抗がん薬選択のための臨床体外診断システムとして,真の個別化医療ツールになることが期待されている.従来の個別化医療のオミクス基盤に加え,患者がん移植ゼブラフィッシュによる個別化医療は,その患者の治療薬選択に活用する真の次世代プレシジョンメディシンであり,大きなパラダイムシフトが実現しつつある.

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