2019 年 154 巻 3 号 p. 115-120
シグナル分子としての硫化水素(H2S)を提案してから20数年が経つが,神経伝達修飾,平滑筋弛緩,細胞保護,抗炎症,酸素センサー等,様々な役割が報告されている.一方,H2Sの神経伝達修飾作用機序を検討中に,アストロサイトのtransient receptor potential(TRP)チャネル活性化を介したCa2+流入惹起に関わることが分かり,さらに,この作用を惹起する分子実態がポリサルファイド(H2Sn)であることが明らかとなった.H2Sが一酸化窒素(NO)との相乗効果によって血管平滑筋を弛緩することは,H2S研究の初期に既に分かっていたが,最近になって,H2SnがH2SとNOとの相互作用によりできることが判明し,H2SとNOとの相乗効果のメカニズムのひとつと考えられるようになった.H2SやH2Snがさらに酸化されてできる亜硫酸(H2SO3)が,H2SやH2Snとは異なったメカニズムで神経細胞を酸化ストレスから保護することが分かり,これら分子の生体での重要性が注目されている.