近年,硫化水素(H2S)やパースルフィドやポリスルフィドなど0,−1価の硫黄原子(sulfane sulfur)を含む分子といった活性イオウ分子の生理機能に注目が集まっており,レドックス制御や抗酸化作用等への関与が報告されている.一般に,蛍光プローブは簡便に利用でき,生細胞や組織において標的分子をリアルタイムに検出することが可能である.そこで,H2Sやsulfane sulfurの機能解明のツールとして,それぞれに対して高い感度及び選択性を示す蛍光プローブの開発に取り組んだ.H2S検出蛍光プローブHSip-1は,環状ポリアミン構造に配位した銅イオン(Cu2+)を構造中に持ち,H2Sとの反応によりCuSが形成し分子からCu2+が外れることで強い蛍光を発する.HSip-1は高い選択性及び高い感度を示し,さらに生細胞イメージングへ応用可能であることを明らかにした.また,sulfane sulfurは他の硫黄原子に可逆的に結合するというユニークな性質を示すことが知られており,その特性及びキサンテン系色素の分子内スピロ環化反応を利用し,可逆的にsulfane sulfurを検出可能なoff/on型の蛍光プローブSSip-1の開発に成功した.開発したプローブは生細胞における蛍光イメージングだけでなく,プレートリーダーを利用した阻害薬スクリーニングへの応用も可能である.我々はHSip-1を利用し,活性イオウ分子産生酵素の一つである3-mercaptopyruvate sulfurtransferase(3MST)に対する世界初の選択的阻害薬の開発に成功した.