2019 年 154 巻 4 号 p. 192-196
一次繊毛は,中心小体由来の基底小体と微小管ベースの軸糸からなる非運動性繊毛である.近年,繊毛病の発症とのつながりにより一次繊毛の構造と機能が注目されつつある.走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)は細胞を生きたままで表面の形状や機能をナノスケールでマッピングすることが可能である.さらに,形状計測に関しては,蛍光画像のように測定対象物をラベル化する必要がない.著者らは,SICMを用いてヒト網膜色素上皮細胞株(RPE-1細胞)とイヌ腎臓尿細管上皮細胞株(MDCK細胞)の一次繊毛の構造をナノスケールで比較した.さらに,高解像度なSICMの形状イメージングにより,蛍光標識が困難なシリアポケットの可視化にも成功した.