2019 年 154 巻 4 号 p. 203-209
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は世界中で増加の一途を辿っている慢性肝疾患である.特にNAFLDの一部の患者は,予後不良な非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと進展し,しばしば肝線維化を呈して,最終的には肝硬変や肝細胞がんの発症に至る.肝線維化はNASHなどの慢性的な肝臓での障害に起因する細胞外マトリックスの過剰蓄積であり,非常に動的なプロセスである.肝星細胞の活性化は,静止型のビタミンA貯蔵細胞が増殖性で線維化促進性のmyofibroblastに形質転換することであり,非臨床の肝線維化の病態モデル及び臨床的にも,肝線維化の進展の中心的な役割を有することが概念として確立している.しかしながら,オートファジー,コレステロール代謝,ヘッジホッグ経路,マクロファージからのシグナルなど,肝星細胞の活性化を制御する新たな経路やメディエーターが次々と見出されており,複雑な制御機構が明らかとなってきている.また肝線維化が解消する過程で,活性化した肝星細胞がアポトーシス,細胞老化,そして脱活性化によりクリアランスを受けることが示されてきている.このような発見は,肝星細胞の活性化の可逆性を示唆しており,その機序を解明することにより,NASHなどの慢性肝疾患の治療薬の創製に繋がることが期待される.