日本薬理学雑誌
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特集:筋のホメオスタシスとその異常による疾患
2型リアノジン受容体の活性異常による不整脈疾患とその治療戦略
呉林 なごみ村山 尚
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2020 年 155 巻 4 号 p. 225-229

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抄録

2型リアノジン受容体(RyR2)は心臓の興奮収縮連関において中心的役割を果たす筋小胞体のCa2+遊離チャネルである.RyR2のCa2+遊離活性が異常になると細胞内Ca2+動態に異常をきたし,それが異所性興奮すなわち不整脈の引き金になるという研究が数多く報告されている.たとえば,RyR2のアミノ酸変異はカテコラミン誘発性多型性心室頻拍(CPVT),特発性心室細動,左室緻密化障害などさまざまな不整脈疾患を起こすことが報告され,変異の総数は300種類を超えている.また慢性心不全ではリン酸化や酸化等によるRyR2の修飾異常が起こると考えられている.これらの多様な不整脈疾患の詳細とそのメカニズムはまだ解明されていない点が多い.我々はHEK293細胞を用いたRyR2チャネルの機能解析により,様々な疾患変異や修飾異常を定量的に評価する方法を確立した.その結果,催不整脈性変異には機能亢進型と機能抑制型があることを見出した.臨床診断ではそれらを区別することが困難なため,本解析法は不整脈性疾患の診断および治療法の選択に非常に有用なことが分かった.このレビューでは,疾患変異RyR2に関する研究の現状と課題について解説する.

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