日本薬理学雑誌
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特集:中枢神経におけるGSH産生促進を介する神経保護機構
神経細胞におけるグルタチオン産生調節機構
松村 暢子木下 千智青山 晃治
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2021 年 156 巻 1 号 p. 26-30

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抄録

グルタチオン(GSH)は,グルタミン酸,システイン,およびグリシンからなるトリペプチドで中枢神経において重要な神経保護物質として働く.アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患においては,発症前からの脳内GSH量の減少が示唆されており,GSHの調節機能障害は神経変性疾患発現に関与すると考えられる.神経細胞におけるGSH産生は細胞内へのシステイン取り込みが律速段階となっており,この取り込みは興奮性アミノ酸トランスポーターであるexcitatory amino acid carrier 1(EAAC1)が担っている.EAAC1の機能不全は脳内GSH量を減少させ,神経変性の過程に大きな影響を及ぼすと考えられる.マイクロRNAの一つであるmiR-96-5pはEAAC1発現を抑制することから,miR-96-5pインヒビターを用いたEAAC1の発現増加は,神経細胞内のGSH産生を促進させることにより神経変性疾患の発症を抑制する,あるいは進行を遅らせる新たな治療戦略となり得る.

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