日本薬理学雑誌
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実験技術
カイコ-バキュロウイルス発現系を用いた抗ウイルスワクチン抗原の生産
日下部 宜宏
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2022 年 157 巻 2 号 p. 128-133

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抄録

中国武漢でアウトブレイクした新型コロナウイルス(SARS-2)感染症(COVID-19)は,地球規模での感染爆発となり,現在も多くの死者を出し続けている.COVID-19に限らず,地球規模での環境変動や人的交流・物流のグローバル化により,パンデミックの危険性は増大し続けている.一方,このような未知の新興感染症に対する備えは不十分であり,ウイルス感染症への対応は,人類が直面している重要課題の一つとなっている.ワクチンによる疾病予防は,最小の費用で最大の効果が期待される理想的な疾病対策と考えられている.特に,治療薬がない,もしくは少ないウイルス病対策においては最重視されている.COVID-19対策では,新しい核酸ワクチン(mRNA型やウイルスベクター型ワクチン)が先導しているが,現在でも,ワクチンの主流は病原体であるウイルスそのものを用いる不活化ワクチンや弱毒生ワクチンである.病原体の一部の特定ウイルスタンパク質(サブユニット)を組換えタンパク質として生産してワクチン抗原対象にするワクチンも開発が進んでいるが,今回のCOVID-19のスパイクタンパク質抗原(核酸ワクチンも同じ抗原を標的にしている)のように,組換えタンパク質としての大量生産が困難な抗原については,生産開発が進んでいないもの多い.本稿では,このような難発現性のワクチン抗原,特にウイルス様粒子(VLP)の生産に優位性があるカイコ1頭1頭を昆虫工場に見立てた組換えタンパク質ワクチンの開発について紹介する.

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