2022 年 157 巻 2 号 p. 111-114
世界における新型コロナウイルス感染拡大は未だ終息せず,我が国においても未だ予断を許さない状況にある.このような中,現在も,国内外において,ワクチンや医薬品など新型コロナウイルスの治療法の開発が日夜進められている.我々もその一端を担うべく,スーパーコンピュータ「富岳」の始動とともに,「富岳」を用いた新型コロナウイルスの治療薬探索等の研究を行ってきた.具体的には,「富岳」を用いて分子動力学計算を行うことで,既存の医薬品約2,000種の中から,新型コロナウイルスの増殖に関係する標的タンパク質(メインプロテアーゼ)に高い親和性を示す治療薬候補を探索・同定を行った.分子動力学計算による数千規模の薬剤スクリーニングは世界で初めての試みであり,世界ランキング1位の「富岳」だからこそチャレンジできた事例であると言える.本章では,我々の新型コロナウイルスの治療薬探索を例に,スーパーコンピュータ「富岳」の創薬に与えるインパクトについて示す.