日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体 ネモリズマブ(遺伝子組換え)注射剤(ミチーガ®皮下注用60 ‍mgシリンジ)の薬理学的特性と臨床試験成績
金田 倫明
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 158 巻 3 号 p. 282-289

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抄録

ネモリズマブ(製品名:ミチーガ®皮下注用60 ‍mgシリンジ)は,「アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果として2022年3月に世界に先駆け,本邦で承認された新規作用機序の生物学的製剤である.ネモリズマブは,アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)の主要な起痒物質の一つであるインターロイキン31(IL-31)の受容体であるIL-31受容体A(IL-31RA)を標的としたヒト化抗ヒトIL-31RAモノクローナル抗体である.ネモリズマブはIL-31と競合的にIL-31RAに結合することにより,IL-31シグナルの伝達を阻害し,そう痒を抑制する.第Ⅲ相試験では,既存治療を実施したにもかかわらず中等度以上のそう痒を有する13歳以上のAD患者に対し,外用療法の併用下で本剤60 ‍mgを4週に1回皮下投与した際の有効性が投与開始16週後のvisual analogue scale(VAS)変化率により検証されている.また,投与開始16週後の皮膚症状の改善及び生活の質(quality of life:QOL)の改善も確認されている.更に,最長68週間の臨床試験データがあり,そう痒,皮膚症状及びQOLの継続的な改善又は維持が認められている.主な副作用は,アトピー性皮膚炎,皮膚感染症,上気道炎である.本剤投与中に一部の患者では皮膚症状が悪化することがあるため,本剤投与中は患者の状態を十分に観察し,抗炎症外用薬の強化や場合によっては休薬する等の適切な処置が必要である.本剤は,AD患者の最も苦しむ症状の一つであるそう痒を抑制し,皮膚症状の改善をもたらす新たな治療選択肢である.また,患者の睡眠の改善をはじめとした生活における障壁を減らし,QOLの向上に貢献することが期待される.本稿では,ネモリズマブの薬理学的特徴,薬物動態,並びに本剤の国内臨床試験における有効性及び安全性成績について紹介する.

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