日本薬理学雑誌
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特集:マイクロバイオーム創薬研究とその将来展望
日本におけるマイクロバイオーム創薬を推進するための企業コンソーシアム活動の紹介
寺内 淳
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2023 年 158 巻 4 号 p. 326-331

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抄録

次世代シークエンサー(以下,NGSと表記)の登場とその後の欧米による大型国家プロジェクトにより,飛躍的にマイクロバイオームの情報や疾患と関連するデータが蓄積している.とりわけ難治性C. difficile感染症における腸内細菌叢移植療法による驚異的な治療効果が報告されたことからマイクロバイオーム創薬に対する期待が高まり,欧米ではマイクロバイオーム創薬ベンチャーが勃興し既に臨床後期開発品が生まれている.本邦では,残念ながら他のモダリティでも見られるように欧米と比べて周回遅れになりそうな状況であるが,腸内細菌研究では先駆的な研究が国内で始まり,その後も高い研究力を有している分野であることから,国内におけるマイクロバイオーム創薬基盤構築による推進が待ち望まれている.そのような環境下,マイクロバイオーム研究の産業応用を推進する目的で2017年に設立された一般社団法人日本マイクロバイオームコンソーシアムは,製薬会社を含め国内30社以上が参画して協調的活動を進めており,マイクロバイオーム創薬基盤構築に繋がる①ビッグデータを取り扱う上で信頼できる測定基盤としての測定標準,②健常人腸内マイクロバイオームデータ,③マイクロバイオーム創薬を目指した創薬エコシステムの構築,を政府のプロジェクトを活用し,活動を進めている.本稿では,コンソーシアムの紹介とともに,協調的活動を通じた産業化促進についてその内容を報告する.

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