日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 敗血症性多臓器不全の病態生理学的解明と創薬基盤形成
血漿タンパク質HRGは敗血症防止と生体恒常性維持に働く重要な因子である
西堀 正洋和氣 秀徳阪口 政清
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 159 巻 2 号 p. 107-111

詳細
抄録

血漿タンパク質histidine-rich glycoprotein(HRG)は,全身炎症反応時にCRPやα1-antitrypsinのような急性相タンパク質とは逆の動態を示し,血漿中レベルが著明に低下する.マウスの盲腸結紮・穿刺の敗血症モデルを用いてHRGの動態と補充治療薬としてのHRG静注効果が検討され,有望な治療効果が見出された.ヒト血液細胞と培養血管内皮細胞を用いて,HRGの各細胞に対する薬理作用が検討され,細胞の恒常性維持と保護作用を発揮することが明らかにされた.仮説されたHRGの特異的受容体の一つとして,C-type lectin family 1A(CLEC1A)が同定された.さらに,ICU内敗血症患者の血漿中HRG測定データから,HRGレベルは,患者の重症度と予後予測の極めて優れたバイオマーカーとなることが分かった.これまでHRGの生理機能の重要性や,敗血症やARDS病態形成における役割については殆ど注目されてこなかったが,HRGは敗血症カスケードの進行防止と生体恒常性維持に働く重要な血漿因子であることが強く示唆される.

著者関連情報
© 2024 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top