2024 年 159 巻 2 号 p. 101-106
敗血症(sepsis)は,感染症として臓器機能不全が進行する病態と定義される.敗血症の治療では,抗微生物薬の投与に加えて,さまざまな臓器の機能不全を進行させないための全身管理が必要とされる.敗血症の病態形成に関与する分子機構は,pathogen-associated molecular patterns(PAMPs)およびdamage-associated molecular patterns(DAMPs)として,広く認識されるようになった.これらPAMPs/DAMPsは,パターン認識受容体であるToll様受容体,RAGE,NOD様受容体,C型レクチン受容体,cGAS,MDA-5,RIG-I様受容体などを介して,細胞内でNF-κB,AP-1,STAT-3などの転写因子を活性化させ,炎症性分子やサイトカインの産生を転写段階から高める.一方で敗血症では,組織の基幹細胞,免疫細胞,血管内皮細胞などの細胞死を加速させる.敗血症における細胞死の形態も,ネクローシスやアポトーシスに加えて,オートファジー,ネクロプトーシス,マイトファジー,パイロトーシス,ネットーシス,フェロトーシスなどが知られるようになった.このような病態生理学的解釈に基づいて,敗血症に対する新規創薬科学が期待される.