日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬セフィデロコルトシル酸塩硫酸塩水和物(フェトロージャ®点滴静注用1 ‍g)の薬理学的特性及び臨床試験成績
山野 佳則森田 一平有安 まり
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2024 年 159 巻 5 号 p. 331-340

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抄録

カルバペネム系抗菌薬に耐性を示すグラム陰性菌による感染症は,2000年以降に世界中で急速に拡大しており,有効な抗菌薬の治療選択肢が限られることから治療が難渋する傾向にある.2017年の世界保健機関(WHO)の指針にて,カルバペネム耐性グラム陰性菌である腸内細菌目細菌,緑膿菌,アシネトバクター属の各病原体は,新たな抗菌薬の研究開発が必要な最優先の病原体として位置付けられている.塩野義製薬株式会社が創製したセフィデロコルトシル酸塩硫酸塩水和物(フェトロージャ®点滴静注用1 ‍g,以下セフィデロコル)は,シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬として,2023年11月に,日本において「セフィデロコルに感性の大腸菌,シトロバクター属,肺炎桿菌,クレブシエラ属,エンテロバクター属,セラチア・マルセスセンス,プロテウス属,モルガネラ・モルガニー,緑膿菌,バークホルデリア属,ステノトロホモナス・マルトフィリア,アシネトバクター属のうち,カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌株を適応菌種とする各種感染症」を適応症として製造販売承認を取得した.セフィデロコルは,細菌の鉄取り込み機構を利用した独自の菌内への輸送機序と各種カルバペネマーゼに対する高い安定性を有しており,細菌のカルバペネム耐性を克服して抗菌作用を発揮する薬剤である.開発段階においては3つの国際共同臨床治験が実施され,カルバペネム耐性グラム陰性菌による各種感染症を対象としたCREDIBLE-CR試験にて,良好な有効性と安全性を確認するとともに,グラム陰性菌による複雑性尿路感染症患者や院内肺炎患者を対象とした臨床試験にて,有効性について既存治療との非劣性を検証した.セフィデロコルは,治療選択の限られた難治療性のカルバペネム耐性グラム陰性菌による各種感染症に対して,新たな治療選択を提供し,重症感染症治療に貢献することが期待される.

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