日本薬理学雑誌
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特集 拡がるMicrophysiological systems(MPS)の利活用―創薬応用に向けた新展開―
神経系MPSの可能性
鈴木 郁郎
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2025 年 160 巻 2 号 p. 92-96

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抄録

ヒト由来神経細胞を用いたin vitro化合物評価において,MPSの利活用も始まっている.神経系MPSは,マイクロ流路デバイスを用いたMPSに加え,近年では3次元脳オルガノイドもMPSとして認知されつつある.マイクロ流路デバイスを用いた神経系MPSの歴史は古く,細胞体および神経突起の位置制御および神経投射を模倣した異種細胞の連結モデル等が開発されてきた.本稿では,マイクロ流路デバイスで培養領域を制御された細胞体,神経突起の形態画像を用いた機械学習による抗がん薬の末梢神経障害予測,および電気活動を指標とした運動ニューロン-骨格筋モデルの構築例について紹介する.また,脳オルガノイド研究の一例として,難治性てんかんであるドラべ症候群患者由来脳オルガノイドの形態における禁忌薬の応答について紹介する.神経系MPSの創薬応用においては,目的に応じて適切なMPSを開発および利用し,生物学的な再現および信頼性を確保することが今後の発展に重要である.

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