日本薬理学雑誌
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特集 骨格筋恒常性維持における受容体・チャネル研究の最前線
リアノジン受容体を介した熱誘発性カルシウム放出の発‍見と新たな熱暴走メカニズム
鈴木 団大山 廣太郎山澤 徳志子
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2026 年 161 巻 1 号 p. 33-37

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抄録

哺乳類における熱産生の制御は,水温や気温といった外部環境の温度が時々刻々と変化する条件下において,体温の恒常性を維持するために不可欠な機能である.この機能に障害が生じると,発熱や熱中症といった重篤な症状につながりかねない.本総説では,麻酔薬によって骨格筋の熱産生が暴走する悪性高熱症(malignant hyperthermia:MH)を題材として,Ca2+放出チャネルであるリアノジン受容体1型(RYR1)の役割に焦点を当てて行った筆者らの研究を紹介する.これまでの研究から,RYR1の遺伝的変異は,MHをはじめとするCa2+誘発性Ca2+放出(CICR)の異常を特徴とする筋疾患に関連することが知られていた.そこで我々は,RYR1のチャネル機能と熱産生が密接に関連しているのではないか,という作業仮説を得て,これを検証するため,RYR1の野生型またはMH関連変異体を強制発現する培養細胞,およびMHモデルマウス由来の筋細胞に対して,光熱変換を利用する局所加熱法と蛍光温度イメージングを組み合わせた実験を行った.その結果,RYR1において,熱によってCa2+放出が引き起こされる新しい仕組み,すなわち熱誘発性Ca2+放出(heat-induced Ca2+ release:HICR)が存在することを発見した.また麻酔薬によって,筋細胞の温度と細胞質Ca2+濃度が同時に上昇することを示す結果も得ることができた.以上の知見から我々は,MH発症時における筋肉の温度上昇がHICRによってさらなるCa2+放出を誘発し,それがまた温度上昇を引き起こすという正のフィードバックループが形成され,過剰な熱産生が継続してしまう熱暴走メカニズムを提案した.本総説では,これらの成果に基づきシンポジウムで報告した内容をふまえて,実験の背景とその結果をより詳細に述べる.

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