2026 年 161 巻 1 号 p. 45-54
オザニモド塩酸塩(製品名:「ゼポジア®カプセルスターターパック」,「ゼポジア®カプセル0.92 mg」,一般名:オザニモド塩酸塩,以下オザニモド)は,スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体に作用する,経口投与が可能な受容体調節薬であり,S1P受容体の5種類のサブタイプ(S1P1,S1P2,S1P3,S1P4及びS1P5)のうちS1P1受容体及びS1P5受容体に高い親和性で選択的に結合する.オザニモドがS1P1受容体に結合し受容体の活性化が生じると,S1P1受容体への作動作用を介してリンパ球等の細胞表面に発現するS1P1受容体の内在化が誘導されるため,機能的なS1P1受容体拮抗薬として作用する.これらの作用により,自己免疫疾患である潰瘍性大腸炎の病理学的変化が改善すると考えられる.国内第Ⅱ/Ⅲ相試験(RPC01-3103試験)で,中等症から重症の日本人潰瘍性大腸炎患者を対象に本剤の有効性及び安全性が確認された.本邦では2024年12月に既存治療で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療薬として,厚生労働省より製造販売承認を取得し,2025年3月に発売された.潰瘍性大腸炎に対する既存の治療法では,臨床的に意義のある治療効果が認められている一方で,中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者に対する治療薬には,有効性,安全性,及び投与経路にそれぞれ一長一短があり,すべてを満たした治療薬はこれまでに存在しない.オザニモドは,中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者に対して,これまでと全く異なる新規作用機序で潰瘍性大腸炎の臨床症状と粘膜損傷等の器質的改善を含む継続的な高い有効性を有し,安全性プロファイルが良好であることから,服薬コンプライアンスが高く長期使用が可能な利便性の良い経口治療薬であり,本剤を潰瘍性大腸炎治療の新たな選択肢として提供できることは,臨床的にも意義が高いと考える.