2026 年 161 巻 4 号 p. 280-290
片頭痛は世界で約10億人が罹患する頻度の高い神経疾患であり,精神的及び社会的負担は大きく,疾患負荷が極めて高い.片頭痛の治療は急性期治療と予防療法に大別され,従来の急性期治療薬には心血管系リスクに関する禁忌や副作用等の課題,従来の予防療法薬には効果発現までに時間がかかることや副作用等の課題があった.リメゲパントは経口投与可能な低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり,急性期治療と予防療法の両方に用いられる点が特徴である.非臨床試験では,リメゲパントはCGRP受容体に対して高い親和性を示し,冠動脈及び頭蓋内動脈に対する収縮作用は認められなかった.臨床試験でも心血管系リスクを示唆する所見はなく,リメゲパントはトリプタンのような血管収縮作用の懸念は低い.第Ⅰ相試験では日本人健康成人でも速やかな吸収が認められ,急性期治療における速やかな効果発現を支持する.半減期は約10時間と急性期治療薬として比較的長く,効果の持続を支持する.予防療法の観点からは,既存のCGRP関連抗体薬がいずれも注射剤であるのに対し,本薬は口腔内崩壊(OD)錠による経口投与が可能である.薬物相互作用試験では,スマトリプタンと併用したとき,リメゲパント及びスマトリプタンの薬物動態に意味のある変化や血圧の上昇は認められず,リメゲパントとトリプタンとの併用が可能である.片頭痛患者を対象とした国内外の複数の臨床試験で急性期治療としてのリメゲパントの有効性と安全性が確認され,更にリメゲパントの隔日投与による予防療法は1ヵ月あたりの片頭痛日数を有意に減少させた.中枢系副作用を示唆する症状は限られ,便秘の発現割合も低い.良好な安全性プロファイルに加え,急性期治療と予防療法を同一剤形で柔軟に使い分け可能な点は,患者の病態に応じたシームレスかつフレキシブルな治療戦略を可能にし,片頭痛治療の新たな選択肢として臨床的意義が高い.